妊娠10週目は妊娠3ヶ月3週目にあたり、赤ちゃんの姿が確認できるようになる時期です。母体にも変化があらわれはじめ、お腹の膨らみが感じられるようになります。一方で、妊娠初期の不安定な時期でもあるため、できるだけ安静に過ごすことが大切です。
本記事では妊娠10週目の赤ちゃんの発達状況や母体の変化、この時期に受けておきたいおすすめの検査などを解説します。
妊娠10週目の赤ちゃんの発達状況
妊娠10週目(妊娠3ヶ月3週目)になると、赤ちゃんがヒトの形に近づき、エコー検査で頭や胴体などを確認できるようになります。頭殿長(頭の先からお尻の先までの長さ)は約15〜30mmで、脳や心臓などの主な臓器の原型がほぼ完成するのもこの時期です。
エコー検査の際には体を動かしている様子を確認できます。妊娠11週目あたりからエコー検査でダウン症の赤ちゃんによく見られる形態異常が観察できるようになります。また、妊婦健診よりも精密に胎児の状態を観察する胎児ドックでのエコー検査であれば、無脳症や臍帯ヘルニア、四肢の欠損などの先天性異常の観察も可能です。
参照:日本産婦人科医会「6.正常所見8-10週」
参照:日本産婦人科医会「13.妊娠初期の胎児形態異常のスクリーニング」
参照:厚生労働省「働きながら安心して妊娠・出産を迎えるために」
妊娠10週目の母体の変化
妊娠10週目になると、母体にはつわりや頻尿などの症状や、体重の増加が見られるようになります。以下2つに分けてそれぞれ解説します。
- 妊娠10週目によく見られる症状
- 妊娠10週目の体重増加の目安
妊娠10週目によく見られる症状
妊娠10週目には、以下の症状がよく見られます。
- つわり
- 下腹部痛
- 頻尿
- 便秘
- 頭痛
- 肌荒れ
- 乳房の張り
- 気分の浮き沈み
- おりものの増加
- 少量の出血
つわりは妊娠8〜12週頃にピークを迎えることが多く、妊娠10週目はつわりの症状が強く出やすい時期です。つわりの主な症状は吐き気や嘔吐、食欲不振などが挙げられます。つわりの症状が重く、十分な食事ができないことで栄養代謝障害が出る状態を「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼びます。この場合は輸液や薬による治療が必要です。
まだ見た目ではお腹の膨らみに大きな変化は見られませんが、手で触ると膨らみを感じられるようになります。この頃の子宮の大きさは、握りこぶし程度です。子宮が大きくなることで子宮の筋肉や子宮の周囲にある円靭帯が引っ張られたり、子宮周囲の内臓が圧迫されたりします。これにより、下腹部痛や頻尿、便秘などの症状が起こります。
ホルモンバランスの変化によって起きる肌荒れや乳房の張り、おりものの増加、少量の出血などもこの時期によく見られる症状です。ホルモンバランスの変化は心にも影響し、気分の浮き沈みが激しくなることもあります。
なお、妊娠10週目は胎盤がまだ完成しておらず不安定な時期であり、早期流産に注意が必要です。妊娠初期に流産する確率は約10〜15%で、主に胎児の染色体異常が原因で起こります。オーストラリアで行われた調査によると、胎児の心拍が確認できた後に流産が起こる確率は以下の通りです。
妊娠週数 | 流産率 |
6週 | 9.4% |
7週 | 4.2% |
8週 | 1.5% |
9週 | 0.5% |
10週 | 0.7% |
参照:PubMed「Miscarriage risk for asymptomatic women after a normal first-trimester prenatal visit」を元に作成
妊娠週数が進むにつれて流産の確率は低下しますが、妊娠10週目はまだ安定期とは呼べません。妊婦健診で胎児の状態を確認したり、母体に負担がかからないよう過ごしたりすることが大切です。
参照:厚生労働省「働きながら安心して妊娠・出産を迎えるために」
参照:千葉県医師会「妊娠初期の体調不良「つわり」」
参照:日本産婦人科医会「1.総論」
参照:PubMed「Miscarriage risk for asymptomatic women after a normal first-trimester prenatal visit」
妊娠10週目の体重増加の目安
妊娠10週目の体重増加の目安は、妊娠前の体格によって異なります。健康な赤ちゃんを出産するためには妊婦の適切な体重増加が推奨されています。体格別の体重増加量の目安は以下の通りです。
妊娠前の体格(BMI) | 体重増加量の目安 |
18.5未満 | 12~15㎏ |
18.5以上25.0未満 | 10〜13kg |
25.0以上30.0未満 | 7〜10kg |
30.0以上 | 個別対応(上限5kg) |
引用:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「妊娠中の体重増加曲線」
上記の体重増加量は、妊娠前から出産までの増加量を示しています。妊娠10週目の場合、妊娠前のBMI別の体重増減量は以下の通りです。
- 18.5未満:+1〜3kg程度
- 18.5以上25.0未満:+0〜2kg程度増加
- 25.0以上30.0未満:±1kg
- 30.0以上:-1kg
妊婦自身の健康を保つためにも、妊娠中の適性体重を意識しましょう。
参照:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「妊娠中の体重増加曲線」
参照:国立健康・栄養研究所「妊産婦さんが気になるQ&A」
妊娠10週目に茶色いおりものが出る理由
妊娠10週目に血が混じった茶色いおりものが出る理由として、主にホルモンバランスの乱れが挙げられます。
また、胎盤のもととなる絨毛が子宮に根を張る過程で起こる出血が原因になることもあります。これらは妊娠初期によく見られる症状であり、過度に心配する必要はありません。
ただし、症状が長く続く場合やおりものの量が多く気になる場合は、念のためかかりつけ医に相談しましょう。
妊娠10週目の妊婦が受けられる検査
妊娠10週目に妊婦が受けられる検査には以下の2つが挙げられます。
- 妊婦健診
- 自費検査
それぞれどのような検査か解説します。
妊婦健診
妊婦健診は妊婦や胎児の健康状態を定期的に確認する目的で行われる健診です。妊娠初期〜23週までは4週間に1回受診することが推奨されており、主に以下が行われます。
- 妊婦・胎児の健康状態の把握
- 血圧、体重などの検査・計測
- 保健指導
妊婦健診では胎児の成長状況を確認するためにエコー検査も行われます。また、必要に応じて血液検査や子宮頸がん検査なども行い、感染症や子宮頸がんの有無も確認します。
保健指導では食事や生活に関するアドバイスが受けられ、妊娠・出産に関する悩みや不安の相談も可能です。母子ともに健やかに出産を迎えられるよう、検診を受けて出産に備えましょう。
参照:厚生労働省「妊婦健診Q&A」
自費検査
妊娠10週目以降に受けられる自費検査には、以下の2つがあります。
- 絨毛検査
- NIPT(新型出生前診断)
いずれも胎児の染色体異常の有無を調べられる検査です。染色体異常がある場合、ダウン症などの先天性の疾患を抱えている可能性があります。早めの検査を希望するなら、上記2つの検査を検討しましょう。
続いて、それぞれの検査の特徴を解説します。
絨毛検査
絨毛検査は子宮内にある絨毛を採取し、胎児の染色体異常の有無を調べる検査です。妊娠10〜13週頃に行われ、胎盤の一部である絨毛の細胞を培養して染色体異常の有無を調べます。採取・培養した細胞をもとに直接検査するため、染色体異常の有無の診断が確定できることから「確定的検査」とも呼ばれます。
絨毛の採取方法は、お腹に注射針を刺して採取する経腹法と、膣や子宮頸管を通して採取する経膣法の2つです。どちらで行うかは胎盤や胎児の位置によって異なり、エコーで位置を確認しながら採取が行われます。
なお、子宮へ注射針や絨毛を採取するための器具を入れるため、出血や破水、感染症への感染などが起こる可能性があります。また、流産する可能性が1%程度あることにも注意が必要です。こうしたリスクも考慮したうえで、検査の実施を検討しましょう。
参照:兵庫医科大学病院「絨毛検査とは」
参照:日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)」
NIPT(新型出生前診断)
NIPT(新型出生前診断)は妊婦の血液内に含まれる胎児のDNAを分析し、染色体異常の可能性を調べる検査です。以下の疾患の可能性を調べられます。
- 13トリソミー
- 18トリソミー
- 21トリソミー(ダウン症)
NIPT(新型出生前診断)は検査精度が高く、血液検査のみのため母体への負担が少ないことが特徴です。
ただし、NIPT(新型出生前診断)は染色体異常の可能性を調べる非確定的検査であり、診断の確定はできません。診断結果が陽性や判定保留だった場合、診断を確定するためには先述した絨毛検査や妊娠16週以降に受けられる羊水検査などの確定的検査を受ける必要があります。
NIPT(新型出生前診断)は妊娠6週目から受けられるため、早い段階で胎児の状態を確認したい場合におすすめです。
参照:京都済生会病院「出生前診断について ― 血液検査で赤ちゃんの染色体異常がわかるNIPT ―」
参照:日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)」
妊娠10週目に気をつけること・しておきたいこととは?
妊娠10週目はまだ不安定な時期のため、できるだけ安静に過ごし、体に負担をかけないことが大切です。感染症に注意したり、仕事がきつい場合には上司へ早めに相談したりしましょう。また、胎児の発育不良につながる可能性があるため、カフェインの摂りすぎにも注意が必要です。
妊娠・出産にかかる費用は医療費控除の対象のため、申請の準備もしましょう。妊婦健診費や出産時の入院費などの領収書の保管や、通院のための交通費も控除対象です。他にも、出産手当金、育児休業給付金など、妊娠・出産に関わる支援制度への申請手続きの準備も忘れずに行いましょう。
妊娠10週目は赤ちゃんの器官形成が完了する時期
妊娠10週目は赤ちゃんがヒトらしい形に近づき、エコー検査で頭や胴体などの形が確認できるようになる時期です。胎児の成長に合わせて子宮も大きくなりはじめ、手で触れると膨らみが感じられるようになります。
一方で、まだ妊娠初期にあたり、流産の可能性もある不安定な時期です。つわりがピークを迎える妊婦も多いため、体に負担がかからないよう安静に過ごしましょう。
また、妊娠6週目からは早期NIPT(新型出生前診断)、10週目からは絨毛検査が受けられるようになります。負担の少ない方法で早めに出生前診断を受けたいなら、NIPT(新型出生前診断)がおすすめです。
平石クリニックでは、安心してNIPT(新型出生前診断)が受けられる体制を整えています。早めに出生前診断を受けたいと考えている方は、ぜひ平石クリニックへご相談ください。
監修者
自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科 桑田 知之
専門・実績
周産期医学、超音波診断学。とくに出生前診断、胎児形態異常。自動胎動カウントによる胎児well-beingの評価。経膣超音波等の自動追従型超音波ボディマーカーの開発。超音波装置の安全に関する研究。
所属学会
日本産科婦人科学会(専門医)、日本超音波医学会(専門医・指導医・代議員)、日本周産期新生児学会(専門医・指導医・評議員)、日本周産期メンタルヘルス学会(評議員)、日本分娩監視研究会(幹事)他
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運営者情報
NIPT平石クリニック
高齢出産が増えている傾向にある日本で、流産のリスクを抑えた検査が出来るNIPT(新型出生前診断)の重要性を高く考え、広く検査が知れ渡りみなさまに利用していただける事を目指しております。