妊娠のよろこびと同時に、赤ちゃんの染色体異常の可能性について不安を感じたことはありませんか?
ダウン症候群やエドワーズ症候群などの染色体異常は、出生前診断により早期に発見が可能です。出生前診断には、非確定検査と確定検査の2種類があり、それぞれに複数の検査方法が存在します。
この記事では、胎児の染色体検査の種類や検査が可能な時期について詳しく解説します。検査を受けるべきか悩んでいる人や検査方法を具体的に知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
また「胎児ドック」について知りたい方は、こちらで解説をしていますので、ぜひ確認してみてください。
胎児の染色体異常とは?いつわかるのか
染色体異常とは、細胞の中に存在する染色体の数や構造に異常がある状態です。
通常、人間は23対46本の染色体を持っています。この染色体の数が増えたり減ったり、あるいは形が変形したりすると先天性疾患を引き起こします。
染色体異常の原因は複数あり、卵子や精子が作られる過程の細胞分裂が正常にいかないことが一つの要因です。
胎児の染色体異常は、出生前診断と呼ばれる妊娠中に実施される検査で調べられます。出生前診断には複数の種類があり、早いものだと妊娠6週から検査が可能です。
参照:J-STAGE「卵子の染色体数異常の原因」
染色体異常の種類と特徴
染色体異常にはいくつか種類がありますが、以下の3つはとくに発生率の高い疾患として知られています。
- ダウン症候群(21トリソミー)
- エドワーズ症候群(18トリソミー)
- パトウ症候群(13トリソミー)
それぞれの特徴を詳しく確認していきましょう。
ダウン症候群(21トリソミー)
ダウン症候群は、もっともよく知られる染色体異常です。他の染色体異常と比較して発生率が高く、1,000人に1人の割合で発生するといわれています。ダウン症候群は21番染色体が通常より1本多く、3本になっていることが原因で起こります。
ダウン症候群に見られる特徴は以下のとおりです。
- 低身長
- 発達遅延がある
- 手足が短い
- 鼻が低い
- 目がつり上がっている
ダウン症候群は、軽度から中等度の知的障害を伴います。また、先天的な心疾患や消化管疾患を合併する割合も高い傾向にあります。平均寿命は1970年ごろまでは10歳ほどでしたが、現在は60歳前後です。
ダウン症候群の発生率は、母体の年齢とともに上昇します。とくに、40歳以上では100人に1人の割合で発症するとされています。
参照:国立育成医療研究センター「ダウン症(ダウン症候群)」
参照:天使病院「ダウン症の生涯を通しての健康管理について」
エドワーズ症候群(18トリソミー)
エドワーズ症候群は、18番染色体が通常より1本多く、合計3本存在することで引き起こされる疾患です。約3,500~8,500人に1人の割合で発生するとされており、とくに女の子の赤ちゃんに多く見られます。
エドワーズ症候群には、以下のような特徴が見られます。
- 体つきが小さい
- 呼吸が不安定
- 胎動が弱い
- かかとがまるい
- 指が重なる
- 足が曲がっている
エドワーズ症候群は、心臓や呼吸器、消化器系などさまざまな臓器に異常が見られます。また、ダウン症候群と同じく母親の年齢に伴い発生率が上昇します。
生存率は生後1年で10%程度といわれており、子宮内で亡くなることも少なくありません。しかし、医療の発展により現在では生存率が上がり、20歳を超えるケースも増えています。
参照:埼玉医科大学「18 トリソミー(エドワーズ症候群)」
参照:胎児診断治療センター「18トリソミー(エドワーズ症候群)」
パトウ症候群(13トリソミー)
パトウ症候群は、13番染色体の全体または一部の異常が原因で起こります。発生率は約1~2万人に1人です。
パトウ症候群には、以下のような特徴があります。
- 成長や発達の遅れ
- 頭や眼球が小さい
- 脳の構造異常
パトウ症候群は、80%以上で先天的な心疾患が見られ、体のさまざまな部分に異常を伴って生まれてくることがあります。
平均寿命は数時間から数ヶ月とされ、出生1年後の生存率は約10%といわれています。20歳を超えるケースもありますが、一人で歩いたり言葉を話せるようになったりすることはほとんどありません。
参照:埼玉医科大学「13 トリソミー(パトウ症候群)」
染色体異常はいつわかる? 検査の種類と受検時期
染色体異常を診断する検査方法は複数あります。
- 【非確定検査】NIPT(新型出生前診断):妊娠10週~
- 【非確定検査】コンバインド検査:妊娠11~13週
- 【非確定検査】母体血清マーカー検査(クアトロテスト)妊娠15~18週
- 【確定検査】絨毛検査:妊娠11~14週
- 【確定検査】羊水検査:妊娠15~16週以降
非確定検査は流産や死産などの危険性が低い検査方法で、早期に受けられることが特徴です。確定検査は、非確定検査で陽性となった場合や超音波検査で異常がある場合に実施されます。
それぞれの検査方法と受検時期について、詳しく確認していきましょう。
【非確定検査】NIPT(新型出生前診断):妊娠10週~
NIPT(新型出生前診断)は、妊娠10週から受けられる非確定検査です。母体の血液から、お腹の赤ちゃんが染色体異常である可能性を調べます。他の非確定検査と比較して、高い精度で異常を検出できることが特徴です。
NIPT(新型出生前診断)でわかる疾患は以下のとおりです。
- ダウン症候群(21トリソミー)
- エドワーズ症候群(18トリソミー)
- パトウ症候群(13トリソミー)
NIPT(新型出生前診断)は、とくに35歳以上での妊娠や過去の妊娠で染色体異常の胎児を生んだ経験のある人に推奨されています。検査結果は「陽性」か「陰性」で表されますが、これはあくまで可能性を示すものです。
そのため、診断の確定には絨毛検査や羊水検査などの確定検査が必要です。
平石クリニックでは、妊娠6週から早期NIPT(新型出生前診断)が受けられます。さらに、妊娠9週以降に追加費用なしでNIPTの再検査が可能です。
参照:国立成育医療研究センター「NIPT」
【非確定検査】コンバインド検査:妊娠11~13週
コンバインド検査は、血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせた検査方法です。妊娠11~13週ごろから検査が可能です。
血清マーカー検査では、母体から採取した血液を分析し特定の物質の濃度を測定します。超音波検査は、胎児の心拍数や大きさ、首の後ろのむくみなどを測定し異常がないかを確認する検査です。
これらの結果を総合的に評価して、胎児の染色体異常の確率を診断します。
コンバインド検査では、以下の染色体異常の可能性がわかります。
- ダウン症候群(21トリソミー)
- エドワーズ症候群(18トリソミー)
- パトウ症候群(13トリソミー)
コンバインド検査の結果は、「ダウン症候群の確率は1/500」のように確率で示されます。これは同じ検査結果を得た500人の妊婦のうち1人に、胎児がダウン症候群である可能性を示しています。
参照:昭和大学横浜市北部病院「出生前検査外来」
【非確定検査】母体血清マーカー検査(クアトロテスト)妊娠15~18週
母体血清マーカー検査の実施期間は妊娠15~18週です。この検査では、母体から採取した血液の中に含まれる特定の成分の増減を分析します。
また、以下の要因も含めて総合的に染色体異常の可能性を判断します。
- 妊婦の年齢
- 妊娠週数
- 体重
- 家族歴
- 1型糖尿病の有無
母体血清マーカー検査でわかることは、ダウン症候群やエドワーズ症候群、神経管閉鎖障害などの可能性です。
検査結果は、コンバインド検査と同様に確率で示されます。ただし、母体血清マーカー検査は年齢の影響を受けやすいことが特徴です。35~39歳では約18%、40歳以上では約40%が陽性となる傾向があります。
そのため、高い確率が示された場合でも必ずしも染色体異常があるとは限りません。
参照:昭和大学横浜市北部病院「出生前検査外来」
【確定検査】絨毛検査:妊娠11~14週
妊娠11~14週に実施可能な絨毛検査は、染色体異常や遺伝子疾患を調べる検査です。ダウン症候群やエドワーズ症候群、パトウ症候群などのさまざまな先天性疾患を診断できます。
絨毛検査には、主に2つの方法があります。
経腹法 | お腹に細い針を刺し胎盤の絨毛細胞を採取する |
経腟法 | 膣からカテーテルを挿入し、絨毛を採取する |
確定検査は疾患の可能性を判断する非確定検査と異なり、疾患の存在を100%の精度で診断可能です。
しかし、絨毛検査はお腹に針を刺すことから以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 破水
- 出血
- 子宮内感染
- 臓器損傷(血管や腸管など)
- 流産や死産
絨毛検査は羊水検査よりも早く診断できるというメリットがある一方、約1%の割合で流産や死産の危険性があるというデメリットもあります。
参照:母子医療センター「出生前検査、拡大新生児スクリーニングをお考えの方へ」
参照:日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)」
【確定検査】羊水検査:妊娠15週~16週以降
羊水検査は妊娠中期から検査可能となり、絨毛検査のように早期に検出することはできません。しかし、絨毛検査よりも精度が高く100%の確率で診断可能です。
羊水検査では、お腹に針を刺して羊水を採取します。この際、局所麻酔をするため、痛みはほとんどありません。
羊水検査は、絨毛検査同様に破水や感染症などを合併する危険性があります。流産や死産となる可能性は、0.2~0.3%です。
参照:母子医療センター「出生前検査、拡大新生児スクリーニングをお考えの方へ」
染色体異常は産後だといつわかる?
出生前診断を受けずに出産した場合、産後すぐに見た目や症状などで染色体異常がわかることがあります。
たとえば、ダウン症候群の赤ちゃんは頭が小さく鼻のつけ根が平坦などの身体的特徴からある程度判断できる場合があります。また、心臓や消化器などに合併症を伴い、出生直後から症状が現れるケースも少なくありません。
しかし、症状がほとんど現れない場合もあり、思春期や大人になってからわかることもあります。
新生児の染色体異常が疑われるときは、採血による染色体検査で診断が可能です。
染色体異常と判断された際は、早期に治療することで重篤な症状を防げます。呼吸困難や循環器の異常など生命に関わる症状がある場合は、すぐに治療を開始することが重要です。
染色体異常の検査をもっとも早く受けられるのは早期NIPT
染色体に異常を持った胎児は約1,000人に1人の割合で発生します。胎児の染色体異常は、非確定検査や確定検査により診断が可能です。
胎児の状態を知りたい場合、まずは危険性や負担の少ない非確定検査を実施します。なかでもNIPT(新型出生前診断)は、母体の血液を少量採取することで高精度な検査が可能です。
平石クリニックでは、妊娠6週から染色体異常を調べられる早期NIPTが受けられます。検査結果が陽性だった場合でも、羊水検査費用は当院が全額負担いたします。
また、検査を受ける際は陽性だった場合、妊娠を継続するか、検査の方法や危険性は理解できているかなど夫婦でよく話し合うことが大切です。
平石クリニックは認定遺伝カウンセラーが在籍していますので、検査前の疑問や不安があればお気軽にご相談ください。