「妊婦のめまいは何が原因?」「赤ちゃんや母体に影響する病気の可能性は?」などの不安をお持ちではありませんか?
妊婦のめまいは、ホルモンバランスの変化や貧血、自律神経の乱れなどが主な原因です。しかし、心臓や脳の疾患が原因でめまいを引き起こしている場合もあり、妊婦や胎児の健康に影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、妊婦のめまいを引き起こす病気や原因、めまいへの対策について解説します。また、めまいによる母体や胎児への影響と、病院を受診する目安についてもお伝えしていきます。
妊婦に起こるめまいの症状
妊婦に起こるめまいの症状を、妊娠週数ごとに解説します。
- 初期(妊娠1~4ヶ月)
- 中期(妊娠5~7ヶ月)
- 後期(妊娠8ヶ月以降)
詳しく見ていきましょう。
初期(妊娠1~4ヶ月)
妊娠初期のめまいは、以下のような症状から発生する傾向があります。
- ホルモンバランスの変化
- つわりによる嘔吐や吐き気
- 自律神経の乱れによる動悸や息切れ
妊娠初期はホルモンバランスの変化により、めまいやイライラ、頭痛などさまざまな症状を引き起こします。中でもプロゲステロンと呼ばれるホルモンは、妊娠経過とともに増加し、めまいや吐き気を引き起こすことが特徴です。
また、つわりの原因ともされるhCGホルモンは妊娠初期になると分泌量が急激に増加し、吐き気や嘔吐を引き起こします。嘔吐が繰り返される場合は、脱水症状によりめまいを感じることも少なくありません。
ホルモンの分泌は、自律神経にも影響します。自律神経はストレスの影響で乱れる傾向があり、ホルモンバランスの変化はストレスを感じやすくする要因の一つです。
自律神経の乱れは動悸や息切れを引き起こし、ふわふわとした動揺性のめまいが生じることがあります。
妊娠超初期と呼ばれる妊娠0〜3週でも、自律神経やつわりの影響でめまいが発生することが多くあります。
参照:ミネルバクリニック「妊娠超初期症状のめまいの原因は|生理前症状・貧血との違いや対処法を解説」
中期(妊娠5~7ヶ月)
妊娠中期のめまいは、以下の症状が関連して起こると考えられます。
- 鉄欠乏性貧血
- 起立性低血圧
妊娠中期以降は、血液量の変動により貧血になりやすい状態です。とくに多いのが鉄欠乏性貧血で、妊婦が発症する貧血の77〜95%を占めるといわれています。
鉄欠乏性貧血を発症すると動悸や息切れ、全身の倦怠感やめまいなどの症状が現れます。
起立性低血圧は妊娠週数に関わらず発症する可能性がありますが、ホルモンの影響を受けやすい妊娠初期から中期のはじめにとくに多い症状です。
起立性低血圧は脳貧血とも呼ばれ、立ち上がったときにめまいや頭痛を引き起こすことが特徴です。重度の場合は、立っていられないほどのめまいや失神を生じさせることもあります。
参照:恩賜財団 済生会「鉄欠乏性貧血」
参照:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性低血圧の原因とは?ストレスが起因しているのか解説」
参照:赤ちゃん&子育てインフォ「妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)」
参照:難病情報センター「用語:起立性低血圧 (きりつせいていけつあつ)」
参照:大正大学「保健だより 脳貧血について」
後期(妊娠8ヶ月以降)
妊娠後期のめまいは、次のような症状と関連して起こると考えられます。
- 妊娠高血圧症候群
- 仰臥位低血圧症候群
妊婦高血圧症候群は妊婦の約20人に1人の割合で発生し、妊娠後期に多い疾患です。血圧の上昇や頭痛、めまいなどが主な症状として現れ、重症化すると妊婦や胎児に悪影響を及ぼすとされています。
仰臥位低血圧症候群は、仰向けの体勢を取った際にお腹の重さで血管が圧迫されることで起こる疾患です。血管が圧迫されることで、心臓や脳に血液が送られにくくなり、めまいや動悸を引き起こす可能性があります。
朝や寝起きに立ちくらみが起きたら、急がず徐々に起き上がることが大切です。立ち上がる際にめまいが起きやすい場合は、転倒防止のために椅子など掴まれるものを近くに用意しておきましょう。
参照:日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
参照:小坂産病院「妊娠高血圧症候群は妊娠後期に多い病気です」
参照:国立成育医療研究センター「妊娠高血圧症候群(Hypertensive Disorders of Pregnancy: HDP)」
妊婦に起こるめまいの原因
妊娠中に起こるめまいの原因は、主に以下の6つです。
- つわり
- 貧血
- 自律神経の乱れ
- 三半規管の不調
- 低血圧
- 風邪
具体的な原因と症状を確認していきましょう。
つわり
妊娠初期にめまいを感じる場合は、つわりが原因の可能性があります。
つわりは妊娠5〜6週から始まり、めまいや頭痛、吐き気などを引き起こすことが特徴です。つわりの原因は、妊娠の維持に必要なhCGホルモンの急激な増加を含む複数の要因によるものです。
重度のつわりは妊娠悪阻と呼ばれ、十分な食事や水分が取れずに脱水状態になる可能性があります。脱水症はふらつきや立ちくらみを引き起こすことがあり、それによってめまいを感じる可能性があります。
つわりは、妊娠12〜16週ごろに収まることが一般的です。しかし、妊娠中期を過ぎても吐き気やめまいが続く場合は、鉄欠乏性貧血など他の病気が原因の可能性があるため、注意が必要です。
貧血
妊娠中は鉄分が不足しやすいため、貧血によるめまいが起こる可能性があります。
貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が減少している状態です。
妊娠中は、胎児に栄養を届けるために血液量が増加します。とくに、妊娠中期から後期にかけて急激に血液量が増加し、妊娠前の1.5倍に増えるといわれています。
しかし、増加するのは主に血漿と呼ばれる赤血球を浮かべる成分で、赤血球の増加はそれほどではありません。その結果、妊娠中の血液は水で薄められたような状態になることがあります。
加えて妊娠中は鉄分の必要量が増加し、妊娠していない女性に比べて約1.5倍の鉄分が必要です。妊娠中期以降はとくに貧血になりやすいため、鉄分を多く含む食品を積極的に摂取することが大切です。
たとえば、ほうれん草や牛肉、あさりなどは鉄分が豊富に含まれています。
参照:徳洲会グループ「血液造血器の病気:貧血」
参照:J-STAGE「妊娠期から産褥期の自律神経活動の推移」
参照:洛和会音羽病院 マタニティー「ママの体重のお話」
自律神経の乱れ
自律神経の不調は脳への血流不足を引き起こし、めまいを引き起こしやすくなります。
自律神経は交感神経と副交感神経から成り立っており、妊娠中は交感神経の活動が活発になる傾向があります。交感神経が優位になると、血管の収縮を促すため血圧が高くなりやすい状態です。
その結果、めまいや動悸、頭痛などの症状が現れやすくなります。
妊娠中に自律神経が乱れる原因は、主にストレスやホルモンバランスの変化です。妊娠初期は体の変化やつわり、出産への不安からストレスを感じることが多い傾向にあります。
また、妊娠初期から後期にかけて増加するプロゲステロンと呼ばれるホルモンは、交感神経の働きを高めるといわれています。
妊娠中に自律神経を整えるには、適度な運動がおすすめです。妊娠中は激しい運動を避ける必要があるため、軽いウォーキングやマタニティヨガなどを行うとよいでしょう。
マタニティヨガでは、ゆっくりとした呼吸を通じて心と体をリラックスさせ、ストレス軽減に役立ちます。
参照:京都大学学術情報リポジトリ 「褥婦の自律神経活動、身体組成、心理状態と超音波診断法の妊婦への心理的影響」
参照:J-STAGE「性周期における自律神経機能の変動」
参照:J-STAGE「健常若年女性における月経周期中の大腿筋群筋硬度の変動」
三半規管の不調
三半規管に不調が起こると、体の平衡感覚を正常に保てずにめまいを引き起こす原因となります。
三半規管は耳の奥に位置し、中はリンパ液で満たされた状態です。頭を動かすとリンパ液の流れが変化することで、体の平衡感覚が保たれます。
しかし、ストレスを感じると三半規管に不調が生じ、めまいを引き起こすと考えられます。
妊娠中のストレスやホルモンバランスの変化が交感神経を刺激し血管が収縮すると、三半規管に酸素や栄養が届きづらくなり機能が低下します。
また、三半規管にあるリンパ液はストレスなどの要因で増加することが特徴です。リンパ液が過剰に増加すると内耳がむくみを起こし、メニエール病と呼ばれるめまい症状を起こすといわれています。
さらに、三半規管の中に耳石が入り込むとリンパ液の流れを乱し、良性発作性頭位めまい症を発症します。
耳石は、三半規管の根元にある壁に存在する小さな塊です。この耳石が、ストレスなどの要因によりはがれやすくなり三半規管の中に入り込むと、良性発作性頭位めまい症の原因となります。
参照:順天堂病院「メニエール病」
参照:社会医療法人 北斗「良性発作性頭位めまい症(りょうせいほっさせいとういめまいしょう)」
低血圧
妊娠中は、自律神経の影響や腹部の拡大などにより低血圧になりやすいとされています。
たとえば、妊娠初期は起立性低血圧を発症する可能性があります。起立性低血圧は、立ち上がった際に脳に十分な血液が届かず低血圧になる状態です。
主な症状にはめまいや立ちくらみがあり、寝た状態や座った状態から立ち上がると血の気が引き視界が暗く感じるめまいを伴うことがあります。
妊娠中に起立性低血圧を引き起こす理由は、ホルモンの影響により血管が拡張されることで血圧が低下しやすいためです。症状が重い場合は失神に至ることもあり、胎児の身に危険が及ぶ可能性があるため、めまいがあるときはゆっくりとした動作を心がけましょう。
妊娠中期から後期にかけては、仰臥位低血圧症候群におちいりやすいとされています。これは、成長する胎児によってお腹が大きくなり、下大静脈が圧迫されることで血圧が低下するためです。
気分が悪くなった際には仰向けの姿勢を避け、左側を下にして横になることで症状が改善する傾向があります。長時間にわたる圧迫は、胎児の低酸素状態を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
参照:難病情報センター「用語:起立性低血圧 (きりつせいていけつあつ)」
参照:一般社団法人 起立性調節障害改善協会「立つと目の前が暗くなる」時の原因や対策・治療法を解説」
参照:J-STAGE「仰臥位低血圧症候群を呈した巨大腹部腫瘍の 1例」
風邪
妊娠中は免疫力が低下するため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすい状態です。風邪で発熱すると、上昇した体温を放出しようとする過程で皮膚の血管が拡張し、脳や全身への血流が減少してめまいを引き起こすことがあります。
また、風邪に似た感染症であるインフルエンザやコロナウイルスも、めまいを引き起こす原因となることがあります。
通常の風邪は、安静にしていれば徐々に回復することが一般的です。しかし、妊娠中は免疫力の低下により重症化する危険性が高いと考えられています。
風邪が重症化すると高熱が続き、胎児の臓器形成に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
また、風邪に似た症状の風疹やトキソプラズマ症は、感染すると胎児の健康に重大な影響を与える可能性があります。高熱が続く場合や不安な症状がある場合は、早めに医師の診断を受けましょう。
参照:J-STAGE「妊婦・授乳婦のかぜ」
参照:育児と乳歯の情報サイト ママあのね。「【産科医監修】妊婦さんが気をつけたい感染症「インフルエンザ」」
妊婦に起こるめまいへの対策
妊婦に起こるめまいへの対策は、以下の3つです。
- 安静にする
- 薬を飲む
- 病院に行く
安静にする
妊娠中にめまいがある場合は、無理せず体を休めることが大切です。無理に動こうとすると、体調が悪化したり転倒したりする原因になります。
立ち上がる際に足元がふらつく立ちくらみや、頭がふらふらするめまいがあるときはとくに注意が必要です。めまいを感じるときは座ったり横になったりして、症状が改善するまで安静にして過ごしましょう。
また、妊娠中は栄養バランスのとれた食事を心がけることも大切です。とくに、タンパク質や鉄分の摂取は貧血の予防に役立ちます。
栄養の吸収をよくするには、胃酸の分泌が重要です。ゆっくりよく噛んで食べ、栄養の吸収を助けましょう。
参照:健康長寿ネット「貧血予防に良い食事・食べ物・調理方法とは」
薬を飲む
妊娠中のめまいがつらい場合は、医師に相談することで薬の服用も可能です。妊娠中に薬を服用すると、奇形児となる確率を上げると考えられていますが、影響のない薬も存在します。
たとえば、つわりに処方されるプリンペラン、鉄欠乏性貧血に処方されるフェロミアやインクレミンシロップなどは妊娠中でも処方されやすい薬です。また、風邪に処方されるメジコンは奇形の発生率を上昇させないことで知られています。
漢方薬では、つわり症状の緩和に小半夏加茯苓湯や半夏厚朴湯などが処方されやすい傾向にあります。
貧血によるめまいには、鉄分のサプリメントを摂取することもおすすめです。ただし、市販のサプリメントを服用する前は必ず医師に相談してください。
サプリメント服用によって一部の栄養素を過剰に摂取する危険性があり、胎児や妊婦自身に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
処方された薬を服用する際も医師の指示に従い、用法や用量を守って服用しましょう。
参照:東京かつしか赤十字母子医療センター「妊娠中のサプリメントの利用について」
参照:厚生労働省学研究成果データベース「大規模データを用いた漢方製 のアウトカム評および費用分析に関する研究」
参照:冬城産婦人科医院「妊娠悪阻(つわり)に対して処方することが多い漢方薬」
参照:冬城産婦人科医院「鉄欠乏性貧血の原因・診断・治療」
参照:小塙医院「Q:つわりがひどいです。対処法はありますか?」
参照:兵庫県立大学「自分に合ったつわり軽減方法が、きっとある!」
参照:神戸医療センター「妊娠時の安全性評価・授乳中のカテゴリー」
病院に行く
めまいの症状が強く表れる場合や以下のような症状を伴う場合は、病院への受診をおすすめします。
- 冷や汗をかく
- 動悸がある
- 頭が割れるように痛い
- まっすぐに歩けない
- ろれつが回らない
めまいは、血圧の変動や耳の不調、心臓や脳の疾患によって引き起こされる傾向があります。とくに、心臓や脳が原因のめまいには注意が必要で、心筋梗塞や脳血管障害など命に関わる病気の可能性があります。
心臓に異常がある場合は、動悸や冷や汗を伴っためまいが特徴的です。脳に異常がある場合は、ふわふわとした浮動性のめまいが現れ、まっすぐに歩けない、ろれつが回らないなどの症状を伴うことがあります。
耳の不調によりめまいが起こるメニエール病や良性発作性頭位めまい症などは、命に危険を及ぼす可能性はほとんどありません。
しかし、メニエール病は不定期にめまいを繰り返し悪化する可能性があるため、早い段階で病院を受診し重症化を防ぐことが重要です。
また、妊婦健診をしっかりと受けることも大切です。低血圧や貧血などは妊婦健診時の血液検査でも確認できます。
不安な症状があれば医師に相談し、自身と赤ちゃんの健康を守りましょう。
参照:日本福祉大学「心疾患に伴うめまい」
参照:大阪府医師会「メニエール病」
参照:総合南東北病院「突発性難聴とメニエール病」
妊婦のめまいは胎児への影響はある?
妊娠中のめまいは、原因や症状の度合いによって胎児に影響する可能性があります。胎児への影響が懸念される、めまいを伴う症状や疾患は以下のようなものです。
- 重度のつわり
- 貧血
- 妊娠高血圧症候群
妊娠悪阻と呼ばれる重度のつわり症状がある場合、水分補給が困難になり脱水症状に陥ることがあります。脱水症状が続くと、妊婦の血液量が減り血圧が低下することで胎児が循環不全を起こす可能性が考えられます。
妊娠初期から中期にかけての貧血は、早産や低出生体重児となる頻度が高いことが特徴です。とくに、低出生体重児で生まれる可能性は1.29倍に上昇することがわかっています。また、急速に発症した重度の貧血では胎児が死亡する可能性があるため注意が必要です。
妊娠高血圧症候群では、重症の場合は子宮や胎盤の血流が悪くなることで胎児発育不全や低出生体重児となる可能性があります。
一方で、脳貧血などを引き起こす起立性低血圧や一般的なつわりは、胎児に直接影響を及ぼすことはありません。ただし、立ちくらみなどで転倒するとお腹を強打する可能性があるため、徐々に立ち上がるなど対策が必要です。
参照:日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
参照:国立成育医療研究センター「妊娠高血圧症候群(Hypertensive Disorders of Pregnancy: HDP)」
妊婦のめまい症状がひどい場合は医療機関を利用することも大切
妊婦のめまいは、つわりや貧血、低血圧などが原因として考えられます。めまいを感じるときはゆっくりとした動作を心がけ、転倒しないように気をつけることが大切です。
めまい防止の薬を服用することも可能ですが、必ず病院で処方してもらいましょう。サプリメントを服用する場合も、事前に医師に相談してください。
また、症状が重い場合や動悸や冷や汗などを伴うめまいは病院を受診することをおすすめします。とくに、めまいの原因となる妊娠高血圧症候群や重度の貧血は胎児の健康に影響を及ぼす可能性があります。
不安な症状があれば早めにかかりつけ医に相談し、自身と胎児の健康を守りましょう。
大切な命と安心な出産のために
当院では、ご希望される妊婦様、ご家族様がNIPT検査内容を理解して受けられる環境をご提供します。
新型出生前診断・NIPTは、お母さまの血液から胎児の3種類の染色体異常を調べることができる、スクリーニング検査です。
運営者情報
NIPT平石クリニック
高齢出産が増えている傾向にある日本で、流産のリスクを抑えた検査が出来るNIPT(新型出生前診断)の重要性を高く考え、広く検査が知れ渡りみなさまに利用していただける事を目指しております。