2022.07.13 Wed

子宮内膜症の症状と原因は?検査方法や治療法、予防法も解説

出産時間が短い

「子宮内膜症の原因は?」「子宮内膜症が進行すると不妊になる?」などの疑問や、不安をお持ちではありませんか?

子宮内膜症は、20代~40代の女性に多くみられ、10人に1人が発症するといわれています。子宮内膜症は放置することで進行し、不妊の原因となる可能性があります。そのため、早期発見と早期治療が重要です。

この記事では、子宮内膜症の症状や原因、検査方法や治療方法について解説します。また、子宮内膜症の予防方法についても具体的にお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。

子宮内膜症とは

子宮内膜症とは、子宮の内側を覆うはずの組織や細胞が子宮以外の場所で発生する病気です。

子宮内膜は月経を引き起こす組織で、月経の際に剥がれ落ちることにより出血します。子宮内膜症を発症すると、女性ホルモンの影響を受けて子宮以外の場所でも月経と同じように出血を繰り返します。

子宮内膜症は、卵巣や仙骨子宮靭帯、子宮と直腸の間にある腹膜などに発症しやすい病気です。子宮内膜症を放置すると、強い痛みで日常生活に支障をきたす他、がんを合併する可能性もあります。

子宮内膜症は進行性の病気であるため、症状がある場合は早めに治療を行うことが大切です。

参照:京都済生会病院「子宮内膜症ってどんな病気?― 現代病である子宮内膜症について詳しく知りましょう ―
参照:近畿大学病院「子宮内膜症の治療
参照:日本産科婦人科学会「子宮内膜症

子宮内膜症の症状

子宮内膜症の主な症状は、痛みと不妊です。とくに月経痛が強く、進行すると以下のような症状も現れます。

  • 下腹部痛
  • 腰痛
  • 排便通
  • 性交痛
  • 不妊

 

子宮内膜症を発症する部位によっては、血尿や血便、血痰が出る場合があります。

子宮内膜症自体が原因での死亡例はありません。ただし、子宮内膜症から重篤な合併症や感染症が引き起こされることが稀にあります。たとえば、卵巣に発症した子宮内膜症は、進行すると卵巣がんとなる可能性があり、発症率は年齢とともに増加する傾向があります。

また、子宮内膜症により大きくなった卵巣が破裂し腹膜炎を起こすことがあり、その際は緊急手術が必要です。さらに、進行した卵巣腫瘍内の細菌が血流にのって全身に広がり、敗血症性ショックを引き起こした例もあります。

そして、子宮内膜症患者の約半数が不妊を合併します。子宮内膜症により、子宮や卵巣の機能が低下することが不妊の原因です。

参照:原三信病院「卵巣嚢腫
参照:鳥取大学医学部付属病院「子宮内膜症 〜がまんしないで月経痛〜

子宮内膜症の原因

子宮内膜症の原因は、明らかになっていません。しかし、月経時に剥がれた子宮内膜が血液とともに腹腔内に逆流することで、子宮内膜症を発症するのではないかと考えられています。

また、性行為により子宮内膜症が引き起こされる可能性のある細菌が感染するという説もあります。しかし、子宮内膜症の原因はまだ解明されておらず、さまざまな説があるため断定することはできません。

子宮内膜症になりやすい人には特徴があるといわれています。たとえば、月経が早い人や月経周期が短い人、月経の回数が多い人などは子宮内膜症の発生頻度が増加する可能性があります。

また、子宮内膜症自体は遺伝しないものの、ゲノム解析により子宮内膜症になりやすい体質が遺伝する可能性が明らかになりました。

参照:北海道医療センター「子宮内膜症
参照:日本医療研究開発期間「子宮腺筋症のゲノム解析から発症と子宮内膜症併発に関連する遺伝子変異を発見―発症機構の解明に期待―

子宮内膜症の進行をステージごとに解説

子宮内膜症は進行性の病気で、4つのステージに分けられます。以下の表から、ステージごとの状態や症状チェックを行いましょう。

進行度状態症状
ステージ1・子宮内膜が子宮以外の場所に点状に散らばり、成長をはじめる
・月経周期で成長した子宮内膜が剥がれ落ちることにより出血し、血腫を作る
・自覚症状はほとんどない
ステージ2・散らばった子宮内膜組織が、増殖と剥離を繰り返して広がっていく
・仙骨子宮靭帯や卵巣などが癒着を起こす
・月経時の出血が増加
・強い月経痛
ステージ3・大きくなった組織が硬くなり、癒着が進む
・卵巣に子宮内膜症ができた場合は、卵巣内に血液がたまりチョコレートのう腫となる
・性行痛
・激しい月経痛
ステージ4・卵管や子宮、膀胱や腸など臓器全体に癒着が広がる・日常生活に支障をきたすほどの強い腰痛
・激しい下腹部痛

 

ステージ1では、自覚症状がほとんどありません。そのため、初期の段階で子宮内膜症を見つけるには、定期的な検診が大切です。

ステージ4に進行すると、子宮内膜が大きく広がることにより卵巣や腸に癒着を引き起こします。子宮内膜症による腫瘍が6cmを超える場合は、手術による治療が必要です。

また、卵巣にできた場合はのう胞が大きいほど、がんを合併する可能性が高まります。そのため強い月経痛や性交痛、下腹痛などの症状がみられる場合は、早めに産婦人科を受診しましょう。

参照:近畿大学病院「子宮内膜症の治療

子宮内膜症の検査は6つ

子宮内膜症の検査方法は以下の6つです。

  • 問診
  • 内診
  • 超音波検査
  • 血液検査
  • MRI検査・CT検査
  • 腹腔鏡検査

 

検査方法を詳しく確認していきましょう。

問診

問診は、医師が患者の症状や病歴を聞き取る検査方法です。子宮内膜症の問診では、主に以下のような項目が確認されます。

  • 月経痛
  • 排便痛
  • 性交痛
  • 骨盤痛
  • 妊娠の希望
  • 初潮の年齢
  • おりものの量や状態
  • 性行為の有無
  • 妊娠の有無

 

治療方針は、妊娠希望の有無や症状の重症度によって変わります。そのため、病院を受診する前にあらかじめ身体の状態を把握し、症状や自分の意思をしっかりと医師に伝えることが大切です。

内診

子宮内膜症の内診では、膣鏡という特殊な器具と指を使い、膣の中を触診します。内診台に座り下着を脱いだ状態で、医師が実際に膣の中を観察します。

内診でわかることは、子宮や卵巣の状態、腫瘍の有無などです。とくに、癒着により子宮の動きが悪い場合や圧痛や移動痛がある場合は、子宮内膜症が進行している可能性が高いといえます。

内診自体は2分程度で終わりますが、膣内に指や器具を入れるため、診察の際に痛いと感じる場合があります。緊張すると膣やお腹が硬くなり痛みが増すことがあるため、力を抜いてリラックスするように心がけましょう。

もし性行為の経験がない場合は、膣ではなく肛門から診察することもあります。内診に抵抗がある場合は、医師に相談しましょう。

超音波検査

超音波検査では、超音波を腹部や膣内に当てて身体の状態を調べます。子宮内膜症の発症部位により、超音波検査を実施する部位は異なります。

腹部に超音波を当てる「腹部エコー」は、お腹の上から超音波機器をあてるため、痛みがなく苦痛を感じにくい検査方法です。膣内に超音波を当てる「経腟エコー」は、子宮や卵巣の中を細部まで調べることができます。

経腟エコーは、膣の中に棒状の超音波機器を入れて検査するため、違和感を覚えることがあります。しかし、出血や痛みはほとんどなく、基本的には苦痛の少ない検査といえるでしょう。

超音波検査では、主に以下のようなことがわかります。

  • 子宮や卵巣の大きさ
  • 子宮や卵巣の位置
  • 内膜の厚さ

 

さらに、超音波検査では子宮内膜症だけでなく、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの診断も可能です。

参照:CREAGE TOKYO「婦人科検診の経腟超音波(経腟エコー)検査について

血液検査

血液検査では、卵巣の腫瘍マーカーなどを調べます。

腫瘍マーカーとは、がんが存在する場合に血液中で増加する物質のことです。子宮内膜症を発症すると、血液中でCA125やCA19-9と呼ばれる物質が増加します。子宮筋腫や卵巣がんを発症している場合も、CA125の値が高くなります。

ただし、腫瘍マーカーの正確性は100%ではありません。実際には、子宮内膜症が軽度の場合、CA125の数値が増加しないこともあります。

血液検査は手軽に行える検査方法ですが、診断の補助として考えましょう。

参照:京都済生会病院「子宮内膜症ってどんな病気?― 現代病である子宮内膜症について詳しく知りましょう ―
参照:日本医科大学付属病院「子宮内膜症が心配な方

MRI検査・CT検査

MRI検査やCT検査では、骨盤内部を撮影することでより詳しい病状が確認できます。卵巣内の状態もチェックできるため、腫瘍の種類を判別することも可能です。

MRI検査やCT検査を行う際は、トンネルのような狭い空間で20〜30分程度じっとしている必要があります。また、検査中は工事現場のような大きな音がするため、ヘッドホンなどで騒音対策を行います。

検査中に気分が悪くなった場合は、インターホンや呼び出しブザーなどで連絡できるため、安心して検査を受けましょう。

参照:大阪医療センター「MRI検査
参照:愛知医科大学病院「MRI検査を受けることになりました。どのような検査ですか?

腹腔鏡検査

腹腔鏡検査は、おへそに5mm程度の穴をあけて腹腔内を調べる検査方法です。切開した部分から炭酸ガスを入れて腹腔内を膨らませたのち、細い管状の腹腔鏡を挿入して検査します。

腹腔内を直接確認できるため信頼度の高い検査方法ですが、全身麻酔が必要です。大がかりな検査となるため、子宮内膜症が重度の場合に手術と同時におこなわれることが多い傾向にあります。

子宮内膜症の治療法

子宮内膜症の治療方法は、主に2つあります。

  • 薬物治療
  • 手術

 

治療方法は、子宮内膜症の進行具合や年齢、妊娠の希望などにより異なります。詳しく確認していきましょう。

薬物治療

子宮内膜症の薬物治療には、低用量ピルなどを用いたホルモン療法と鎮痛剤を使用する2つの方法があります。

ホルモン療法では、以下のような薬を使用します。

低用量ピル・月経量の軽減する・月経痛の軽減する
黄体ホルモン製剤・女性ホルモンの分泌を抑える
・子宮内膜細胞の増殖を抑える
GnRHa製剤・卵巣機能を抑える
・女性ホルモンの分泌を抑える
子宮内留置型黄体ホルモン徐放製剤・月経量の軽減する
・月経痛の軽減する
ジエノゲスト・排卵を止める
・月経を止める
ダナゾール・卵巣の働きを抑える

ホルモンに作用する薬を服用すると、子宮内膜症の症状を軽減できますが、排卵の働きを抑制してしまいます。治療中は妊娠が困難になるため、妊娠を希望する場合には向かないとされています。

鎮痛剤は、子宮内膜症の症状が軽度である場合にのみ使用される薬です。鎮痛剤の効果は痛みの軽減に限られており、子宮内膜症自体が治るわけではありません。

参照:東邦大学医療センター「子宮内膜症について
参照:近畿大学病院「子宮内膜症の治療
参照:聖マリアンナ医科大学 産婦人科学「子宮内膜症でお悩みの方

手術

子宮内膜症で手術が必要と判断されるのは、主に以下のような場合です。

  • 薬物治療の成果がみられない場合
  • 6cm以上の腫瘍がある場合
  • 悪性腫瘍の疑いがある場合
  • 自然妊娠を2年以上しなかった場合

 

また、妊娠を希望する場合も手術による治療がおすすめです。

子宮内膜症の手術は、開腹手術よりも腹腔鏡手術が一般的です。傷が小さく痛みも少ないため、開腹手術よりも早く退院できます。

妊娠を希望する場合は、子宮内膜症を発症している部位のみを取り除く手術をすることで、生殖機能の維持が可能です。一方、妊娠を希望しない場合は、子宮の全摘出を行います。

子宮内膜症は月経がある限り再発する可能性のある病気です。そのため、45歳以上の人や根治を目指す場合は、子宮を摘出することで再発を防止します。

参照:日本医科大学付属病院「子宮内膜症が心配な方
参照:近畿大学病院「子宮内膜症の治療

子宮内膜症を予防する方法

子宮内膜症を予防する方法は、以下の2つです。

  • 低容量ピルで月経をコントロールする
  • 定期検診を受ける

 

それぞれ詳しく解説するので、自分に合った方法を選択しましょう。

低容量ピルで月経をコントロールする

子宮内膜症は、女性ホルモンの影響を受けて増殖するため、ホルモンをコントロールすることが予防に有効です。

低用量ピルには女性ホルモンが配合されており、服用すると月経を抑制できる他、子宮内膜の増殖を防ぎます。さらに、月経痛や月経前後の不快感の改善にも役立ちます。

低用量ピルは、広く使われている安全性の高い薬です。ただし、吐き気や頭痛などの副作用が出る場合もあります。

また、低用量ピルにはさまざまな種類が存在するため、産婦人科に相談してから使用しましょう。

定期検診を受ける

子宮内膜症は、手術により子宮を全摘出しない限り、再発する可能性のある病気です。月経があるうちは再発の可能性が高いため、定期的に検診を受けることが大切です。

定期的に検診を受けることで、子宮内膜症の早期発見につながります。また、症状の進行を防ぎ、適切な治療を受けることにも役立ちます。

子宮内膜症を放置すると不妊の原因になる

子宮内膜症を放置すると、子宮や卵巣機能が低下するため不妊の原因となる可能性があります。

子宮内膜症が軽度であれば、自然妊娠を目指すことが可能です。ただし、子宮内膜症を放置し進行すると、妊娠しにくくなり不妊治療をしても妊娠率が低い傾向があります。子宮内膜症が進行し炎症を繰り返すと、腹腔内が癒着し受精卵の着床を妨げることがあるためです。

さらに、子宮内膜症は卵巣内に発生し、「チョコレートのう胞」になる場合があります。チョコレートのう胞が形成されると、卵巣内で卵胞が正常に成熟するのを妨げ、不妊の原因となる可能性があります。

そのため、子宮内膜症の症状がみられる場合は早めに病院を受診することが大切です。

また、妊娠を希望している場合は、定期的な検診を受けて早期に病気を発見し、治療を受けるようにしましょう。

参照:福田病院「子宮内膜症と不妊

子宮内膜症の可能性がある場合は婦人科を受診しよう

子宮内膜症は、子宮外に子宮内膜組織が増殖することにより発症する病気です。原因は明らかになっていませんが、年齢が上がるにつれて発症する確率が高くなります。

子宮内膜症が進行すると、激しい腰痛や月経痛で日常生活に支障をきたす他、卵巣がんとなることもあります。進行した子宮内膜症は不妊の原因となることもあるため、早めの治療が大切です。

初期の子宮内膜症は自覚症状がほとんどないため、定期的な検診が重要となります。とくに妊娠希望の場合は、不安な症状があれば早めに医師に相談しましょう。

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