「妊娠初期の咳は何が原因?」「咳による赤ちゃんへの影響は?」などの不安をお持ちではありませんか?
妊娠初期におこる咳は、つわりや喘息、感染症などが主な原因です。症状がひどく咳が止まらないのは、赤ちゃんに影響を及ぼす重篤な病気の兆候かもしれません。また、咳が繰り返しおこると腹圧が上昇し、子宮収縮を引き起こす可能性も考えられます。
この記事では、妊娠初期におこる咳の原因と咳が赤ちゃんに与える影響、妊娠中に服用できる咳止め薬などについて解説します。妊婦自身と赤ちゃんの健康を守るために、ぜひ参考にしてください。
妊娠初期におこる咳の原因と対処法
妊娠初期におこる咳の原因は、主に以下の5つです。
・ホルモンバランスの変化
・つわりによる吐き気
・水分不足
・ストレスによる喘息
・感染症
妊娠中は、体の変化や免疫力の低下により、咳が出やすくなる傾向があります。一時的な症状で収まることもありますが、放置しておくことで慢性的な疾患に進行する病気もあるため注意が必要です。
ホルモンバランスの変化
妊娠初期は、ホルモンバランスの影響により咳や発熱などの風邪に似た症状が表れることがあります。ホルモンバランスの変化による不調は妊娠初期症状と呼ばれ、咳の他にも以下のような症状が出現する場合があります。
・のどの痛み
・微熱
・眠気
・腹痛
・おりものの変化
妊娠初期症状は妊娠3〜5週に現れ、多くの場合はそのままつわりへと移行します。
妊娠初期は、赤ちゃんの器官が形成される大切な時期です。そのため、症状がつらいと感じても、自己判断で薬を服用することは避けましょう。とくに、妊娠7週目までの赤ちゃんは薬の影響を受けやすく、形態異常をおこす可能性があります。
もし咳が止まらない場合や高熱が続く場合は、他の病気の可能性も考えられます。市販の薬を服用する前に、医師に相談しましょう。
つわりによる吐き気
妊娠初期はつわりにより吐き気を感じることが多く、咳が出ることがあります。また、においにも敏感になるため、わずかな刺激で咳込んでしまう人も少なくありません。
つわりによる吐き気を軽減させるには、以下のような対処法を試してみてください。
・体を十分に休ませる
・適度な運動で気分転換をする
・生姜を摂取する
・ミントやレモンの飴を舐める
・腹式呼吸をする
生姜は、つわりによる吐き気を和らげる効果があるとされています。咳により喉に痛みがある場合は、はちみつを加えた生姜湯で喉を温めるとよいでしょう。また、ミントやレモン風味の飴を舐めると口の中がスッキリし、吐き気が軽減されることがあります。
つわりは通常、妊娠9週目までに始まり、妊娠12週から16週ごろになると症状が軽くなる傾向があります。しかし、妊娠初期を過ぎても吐き気や強い胸焼けが続く場合は、逆流性食道縁が疑われるため、かかりつけ医に相談しましょう。
参照:育児と乳歯の情報サイト「ママ、あのね。」:「つわりを軽減する6つの対策方法」
水分不足
妊娠中は体内の水分が失われやすく、喉の粘膜が乾燥し咳が出ることがあります。
妊娠初期は基礎代謝の増加により汗をかきやすくなるうえ、つわりによる嘔吐でも体の水分が失われます。また、お腹の赤ちゃんに栄養を届けるためには、血液の量を増やす必要があるため、こまめな水分補給が大切です。
水分不足による咳は、水分補給の他にも喉を保湿、保護することで症状を軽減できることがあります。水分不足が原因で咳が出ていると考えられる場合は、以下のような対策をしましょう。
・のど飴を舐める
・温かい飲み物を飲む
・はちみつを舐める
・部屋を加湿する
水分不足により喉が乾燥すると、ウイルスなどの感染症が引き起こされる可能性が高まります。妊娠中は免疫力の低下により、重症化しやすい感染症もあるため、感染予防のためにもこまめに水分補給を行いましょう。
ストレスによる喘息
妊娠初期の止まらない咳は、咳喘息が原因の可能性があります。喘息にはいくつか種類がありますが、咳喘息は息苦しさをともなわず、咳だけが主な症状<・sぱん>として現れます。
妊娠中は、体調や体型の変化からストレスを感じやすく、喘息を発症する引き金になることも少なくありません。また、喘息はホルモンバランスの影響で悪化することがあります。妊婦の3.7~8.4%が喘息を発症するともいわれており、注意が必要です。
咳喘息は、市販の風邪薬や咳止めでは効果が期待できません。咳喘息の症状が長期間続くと、慢性的な気管支喘息に進行する可能性もあります。そのため、咳が3週間以上続く場合は、早めに医師に相談しましょう。
咳喘息の治療には、基本的に吸入ステロイド薬が使用されます。吸入ステロイドは、赤ちゃんへの影響がほとんどないといわれています。ただし途中で治療を中止すると症状が悪化し、赤ちゃんの低酸素血症を引き起こす恐れがあるため、最後まで治療を続けることが大切です。
感染症
妊娠中は免疫力の低下により、感染症にかかりやすい状態です。感染症にはさまざまな種類があり、中には赤ちゃんに影響を及ぼす恐れのある病気も存在します。
以下の表で咳をともなう感染症の例と症状を確認しましょう。
感染症 | 症状 |
風邪 | ・鼻水 ・のどの痛み ・発熱 |
インフルエンザ | ・38度以上の降雪 ・頭痛 ・関節痛 | マイコプラズマ肺炎 | ・発熱 ・全身倦怠感 ・頭痛 |
風疹 | ・リンパ節の腫れ ・発疹 ・鼻水 |
結核 | ・痰 ・微熱 ・全身倦怠感 |
風邪やインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎などのウイルスは、赤ちゃんに直接影響を及ぼすことはほとんどありません。しかし、妊娠中に結核を患うと、低出生体重児や早産となる可能性があります。また、風疹に感染すると、赤ちゃんが先天性疾患や白内障を患う恐れがあります。
どの病気も風邪によく似た症状ですが、高熱が続く場合や体力の消耗が激しい場合は、子宮収縮の原因となることがあるため注意が必要です。咳の症状が続く場合は、安易に風邪と判断せず早めに病院を受診しましょう。
参照:育児と乳歯の情報サイト「ママ、あのね。」:「【産科医監修】妊婦さんが気をつけたい感染症「インフルエンザ」」
参照:厚生労働省:「マイコプラズマ肺炎に関するQ&A」
参照:東京都福祉局:「母子感染について~妊娠中・これから妊娠を考えている方へ~」
妊娠初期の咳の胎児への影響は?流産の可能性は?
妊娠初期の咳が赤ちゃんに影響することは、ほとんどありません。ただし、症状の程度や原因となる疾患によっては、切迫早産や流産となる可能性があります。
たとえば、妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんは先天性風疹症候群を引き起こし流産となる可能性があります。また、妊婦が喘息を発症すると、赤ちゃんの低酸素血症や血流低下を引き起こす可能性があるため、早めの治療が大切です。低酸素血症に陥ると、赤ちゃんの肺や脳に重篤な障害をきたす恐れがあります。
また、激しい咳を繰り返すと腹圧が高くなり、子宮収縮が原因で早産となる可能性があります。体力を極端に消耗する状態が長く続くと、子宮収縮の引き金となることがあるため注意が必要です。症状が長期に渡り続く場合は、早めに医師に相談しましょう。
参照:厚生労働省免疫所FORTH:「風疹について(ファクトシート)」
妊娠初期でも咳止めの薬は使用可能?
妊娠初期でも咳止め薬は使用できます。しかし、赤ちゃんに影響を及ぼす成分が含まれている場合があるため、市販の薬を自己判断で服用することは避けてください。
咳止め薬を服用したい場合は、まずはかかりつけの医師に相談し、病院で処方してもらいましょう。以下のような薬は、赤ちゃんへの影響が少ないとされています。
・メジコン
・アストミン
・清肺湯
・麦門冬湯
なかでもメジコンは、奇形の発生率を上昇させないという報告があります。メジコン咳止め錠は市販薬としても販売されていますが、赤ちゃんへの影響を考慮し、使用前は必ず医師に相談しましょう。
また、喘息による咳の症状がある場合はステロイド吸入が基本の治療法となります。喘息は放置すると慢性化する可能性があるため、咳が長期間続く場合は早めに医師へ相談しましょう。
妊娠初期の咳の予防方法
妊娠初期の咳を予防するために、以下のことに注意して日常生活を過ごしましょう。
・部屋の湿度を40~60%に保つ
・喉を温める
・外出後は手洗いうがいをする
・こまめに水分を取る
・刺激の強い食べものは避ける
妊娠中は免疫力が低下するため、感染症を予防するためにもこまめな手洗いとうがいが大切です。
うがいの際は、水道水で十分に予防できるため、うがい薬は必要ありません。ヨウ素が含まれたうがい薬は、赤ちゃんの甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があるため、使用を避けるようにしましょう。
喉が乾燥すると咳が出やすくなります。部屋を加湿し、こまめに水分を取りましょう。
繰り返し続く激しい咳は、子宮収縮を引き起こすことがあり、早産につながる恐れがあります。咳の予防を心がけ、赤ちゃんと自身の健康を守りましょう。
参照:京都大学環境安全保健機構:「水うがいで風邪発症が4割減少」
妊娠初期の咳は原因を把握して適切に治療しよう
妊娠初期の咳は、つわりによる吐き気や喘息、感染症が主な原因です。妊娠中の咳が赤ちゃんに悪影響を及ぼすことは、ほとんどないといえます。しかし、激しい咳は子宮収縮をおこすことがあり、切迫早産となる恐れがあります。
また、咳の原因が喘息である場合は早めの治療が大切です。喘息は放置すると慢性化し、赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。咳が長く続く場合は、医師に従い治療を行いましょう。