「なかなか妊娠できないから、体外受精を検討しようと思っている」
「体外受精は高いイメージがある」
上記のように考えている人は多いでしょう。体外受精の方法にもよりますが、体外受精は1回38万円程度かかります。しかし、保険治療ができるようになったので、以前よりも自己負担が軽減されました。
この記事では、体外受精の費用や治療の流れ、適用される人、メリット・デメリットを紹介しています。体外受精を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
不妊治療の進め方
不妊治療は、夫婦の負担が少ない治療方法から開始していきます。
不妊治療の一般的な進め方は、以下の通りです。
- タイミング法
- 人工受精
- 体外受精
- 顕微授精
治療が進むほど、金銭的・身体的負担が大きくなります。また、確実に妊娠できるわけではないので、大きな精神的負担を感じてしまうかもしれません。
不妊治療を開始したら、家族や兄弟など、不妊治療の相談をできる人が身近にいると安心です。適度な運動や好きなことをするなど、ストレスをためないように心がけることも大切です。
体外受精とは
体外受精とは、事前に採取した卵子と精子を体外で受精させる治療方法です。受精に成功し、順調に培養が進んだ胚を移植するため、妊娠率が上がります。
体外受精によって生まれた人は、全世界で800万人を超えています。体外受精で生まれ、成人した人野の垢には、自然妊娠によって子どもを授かった人もいるようです。
しかし、体外受精はまだまだ未知の部分が多く、出生後調査が行われています。
体外受精と人工受精の違い
体外受精と人工授精の違いは、受精の方法です。体外受精は卵子と精子を事前に採取して、体外で受精を促します。
体外受精の特徴は以下の通りです。
出産率 | 30% |
---|---|
費用 | 38万円程度 |
通院頻度 | 3回~5回 |
適応される症状 | ・卵管閉塞 ・卵管の機能障害 ・人工授精で妊娠しなかった人 ・乏精子症 ・精子無力症 ・精子奇形症 ・抗精子抗体の人 ・不妊症の原因がわからない人 |
合併症 | ・卵巣過剰刺激症候群 ・腹膜炎 ・腸管損傷 |
人工授精は、事前に採取した精子を排卵のタイミングにあわせて子宮内に注入し、妊娠の可能性を増加させる方法です。
人工受精の特徴は以下の通りです。
出産率 | 50% |
---|---|
費用 | 3万円程度 |
通院頻度 | 3回 |
適応される症状 | ・乏精子症 ・精子無力症 ・性交障害 ・精子頸管粘液不適合 ・抗精子抗体の人 |
合併症 | ・多胎妊娠 ・卵巣過剰刺激症候群 ・子宮外妊娠 ・腹膜炎 |
不妊症治療をはじめる順序としては、以下の順序で行われることが多いです。
体外受精の平均費用
体外受精の費用の平均は、1回あたり38万円程度です。
体外受精を行う回数は、平均3回程度です。そのため、3回通した費用は114万円程度になります。
ただし、体外受精は2022年に保険治療が行えるようになりました。保険適用については、次の章でくわしく解説します。
体外受精は保険適用される
先ほど少し触れたように、2022年から体外受精が保険治療が行えるようになりました。
しかし、保険で治療を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
所得制限 | なし |
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助成額 | 30万円 |
助成回数 | 40歳未満:6回 43歳未満:3回 |
対象年齢 | 43歳未満 |
助成対象者 | ・法律婚の関係がある人 ・事実婚の関係がある人 |
体外受精に適用される助成金はある?
体外受精の治療は、自治体ごとに助成金制度を設けている場合があります。
たとえば、埼玉県では、 特定不妊治療(体外受精・顕微授精)を特定指定医療機関で受けた夫婦に、治療費の一部を助成しています。
不妊症は医療費が高額になるので、お住まいの市区町村ホームページで、不妊症治療の助成制度について調べてみましょう。
体外受精の治療の流れ
不妊治療を検討している人のなかには、体外受精の治療の流れが気になっている人もいるでしょう。
体外受精の流れは、以下のようになっています。
- 卵巣刺激
- 採卵・採精
- 受精
- 胚培養
- 胚移植
- 黄体ホルモンの補充
体外受精の流れにそって、治療内容をくわしく解説していきます。
卵巣刺激
体外受精のはじめに、妊娠率を上昇させるために卵巣を刺激します。
卵巣刺激は、ホルモン薬の種類や投与方法で種類が異なります。体外受精で行われることの多い卵巣刺激の方法は、以下の3つです。
- 低刺激法
- 中刺激法
- 高刺激法
卵巣の状態やご夫婦の希望に応じて治療方針を決定します。
低刺激法
低刺激法には、主に4種類あります。
- クロミッド法
- クロミッド-hMG法
- フェマーラ法
- フェマーラ-hMG法
経口排卵誘発剤を服用して、採卵を行います。
低刺激法は、高刺激法に比べて、採卵できる卵子の数が少ない傾向にあります。より自然に近く、身体に負担が少ない方法で卵子を採取したい場合におすすめです。
【メリット】
- 継続して採卵できる
- 費用が安い
【デメリット】
- 子宮内膜が薄くなる可能性がある
- 採卵できる卵子数が少ない
中刺激法
中刺激法では、フェマーラと排卵誘発剤を使用して治療を行う方法です。
乳ガン治療薬に使われる薬なので、使用時は安全性に配慮する必要があります。卵巣過剰刺激症候群を引き起こす可能性が低いため、採卵と同じ周期で胚移植を行えます。
【メリット】
- 採卵と同じ周期で胚移植できる
- 子宮内膜が薄くならない
【デメリット】
- 妊娠時の安全性を考慮する必要がある
- 女性ホルモンの変化が予想しにくい
高刺激法
高刺激法は、GnRHアンタゴニスト法とも呼ばれる治療方法です。排卵誘発剤と同時に、排卵しないようにする薬剤を使用します。
採卵2日前から排卵を促進する効果がある薬を使用するため、排卵を効果的にコントロールできます。
【メリット】
- 排卵日を調整しやすい
- 1回で多くの卵子を採取できる
【デメリット】
- 卵巣過剰刺激症候群を発症する可能性がある
- 費用が高い
採卵・採精
採卵は、経腟超音波で確認しならが採卵針で卵巣を穿刺して卵子を採取します。
採卵時の痛みは、採卵する卵子の数や卵巣の位置によって異なります。麻酔を使用して採卵するため、痛みが心配な人は医師に心配してみるといいでしょう。
採精は、病院の別室で採取する場合と、自宅で採取する場合があります。
受精
採取した精液は洗浄を行い、運動状況を確認します。健康な精子のみを回収し、卵子と受精させます。
受精方法は以下の通りです。
- 体外受精
- 顕微授精
- split法
受精させる方法は3種類あり、精子に問題が見られない場合は、通常の体外受精を行います。
体外受精
通常の体外受精は、パレットに入れた卵子の上に精子をふりかけて、自然受精を起こします。
体外受精の中で、最も自然に近い状態で受精できます。しかし、受精の可能性は最も低く、受精しない可能性も考慮しなくてはいけません。
顕微授精
顕微授精は、卵子に精子を注入して受精させる方法です。
まず、健康な精子を高倍率で精子の形態異常などを観察します。そして、精子の運動を抑制するために精子の尻尾を傷つけ、卵子に注入します。
精子の尻尾を傷つけるとを不動化処理といい、この処理は受精させるために不可欠です。精子数が少ない場合や、運動精子が少ない場合にも受精できる可能性が高いです。そのため、通常の体外受精で効果が得られなかった場合などに行われます。
顕微鏡受精で生まれた赤ちゃんの先天性異常は、現在のところ自然妊娠の赤ちゃんと差がありません。しかし、男児の場合は男性不妊になる可能性が指摘されています。
split法
split法は、体外受精と顕微授精当時に行う方法です。体外受精と顕微授精の両方を行っているため、受精卵ができない可能性を下げられます。
体外受精での受精が成功していれば、自然に近い形で受精した胚を移植できます。
胚培養
胚培養とは、受精が成功した受精卵を発育させることです。
受精卵は細胞分裂を起こし、胚とよばれる状態になります。受精卵や胚は、必要な栄養素が日々変化するため、状態に合わせて培養液の内容を変えていきます。
実際に胚が移植できるようになるのは、2~6日程度です。
胚移植
胚が順調に成長したら、胚移植を行います。柔らかいカテーテルを使用して、子宮内に胚を注入します。
これまでは、採卵から2日目~3日目で移植されることが多かったです。しかし、近年では、採卵から5日目~6日目で移植されることもあります。
胚移植は痛みを伴わないため、麻酔は使用されません。
黄体ホルモンの補充
胚移植をしたら、黄体ホルモンを補充しながら着床を促します。
黄体ホルモンを補充する理由は、黄体機能を向上させるためです。黄体機能は、卵胞やホルモンの分泌をつかさどっていて、着床の準備・胚の発育を促します。黄体ホルモンを補充することで、着床と妊娠を促す効果が得られます。
体外受精で妊娠できる確率
体外受精で妊娠できる確率は、40%~45%です。しかし、40歳で27%、43歳で14%と、年齢が上がるにつれて妊娠成功率は下がります。妊娠を希望する人は、なるべく早い年齢で、妊活および不妊症治療を行った方がいいでしょう。
具体的には、35歳をすぎると卵子の質が低下する傾向にあります。そのため、35歳までには妊娠に向けて準備をしましょう。
体外受精のメリット・デメリット
「体外受精は精神的・金銭的に大変」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
そこで、体外受精のメリット・デメリットを解説していきます。体外受精のメリット・デメリットを比較して、実際に行うか検討しましょう。
体外受精のメリット
体外受精のメリットは、妊娠率・出産率が上がることです。2年以上自然妊娠が叶わなかった人も、妊娠できる可能性が高いです。
それ以外にも、以下のようなメリットがあります。
- 妊娠率・妊娠率の向上
- 男性不妊にも適応
- 保険が適応される
体外受精は、保険が適応されるようになったため、従来よりも自己負担が軽減されます。治療費用がネックだった人も、不妊治療にのぞめるようになりました。
体外受精のデメリット
体外受精は、卵巣過剰刺激症候群や出血の可能性があります。
排卵誘発剤を使用した後や採卵後は、体調に気を付けましょう。
- 卵巣過剰刺激症候群のリスクがある
- 出血や感染症になる可能性がある
- 多胎妊娠の可能性がある
- 費用が高い
体外受精は3回ほど繰り返し治療を受ける場合が多く、トータル費用が高くなります。しかし、最大6回までは保険が適用されるため、治療を受ける前に確認しておきましょう。
体外受精が適応される人
不妊治療にはいくつか種類があり、身体に負担の少ないものから順に行われます。また、治療内容によっては、その人にとって適切ではない場合もあるので、注意が必要です。
体外受精は、人工授精で子供を授かれなかった人や、原因のわからない不妊、特定の不妊症状が見られる場合です。
特定の不妊症状については、男性・女性にわけて解説していきます。
男性不妊
男性不妊で体外受精が適応範囲になるのは、以下の症状です。
乏精子症 | 精子の数が少ない(精液1mlあたりに含まれる精子が1,600万未満) |
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精子無力症 | 精子の運動率が低い(前進する精子が30%以下) |
奇形精子症 | 奇形精子が精子全体の96%を占めている |
無精子症 | 精液の中に精子が含まれていない |
重度不妊の場合、人工授精よりも体外受精が選択されます。
女性不妊
女性不妊で体外受精が適応範囲になるのは、以下の症状です。
卵管因子 | 卵管が狭窄・閉塞している |
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免疫性因子 | 抗精子抗体 |
難治性 | 子宮内膜症・子宮筋腫 |
原因不明 | 検査を行っても原因が特定できない不妊症 |
抗精子抗体の場合、体外受精が妊娠に有効です。
体外受精を検討すべき人
不妊症治療は、順を追って進めるのが一般的です。
不妊治療の一般的な順番は以下の通りです。
- タイミング法
- 人工受精
- 体外受精
- 顕微授精
すでにタイミング法と人工受精を6周期行っていて、妊娠ができていない場合は、体外受精を検討しましょう。また、重度な男性不妊や両側卵管閉塞が起こっている場合は、前段階はスキップして、体外受精に挑戦するのをおすすめします。
体外受精を検討している人はよくパートナーと話し合おう
不妊症状があり、妊娠を希望している場合、まずはタイミング法で不妊治療を開始します。タイミング法で妊娠が叶わなかった場合、人工受精、体外受精と順を追って治療が行われます。
不妊症治療は、精神的・金銭的・身体的な負担が大きくなるため、治療前にパートナーと話し合うことが大切です。治療前にパートナーと話し合っておかないと、すれ違いに繋がる可能性があります。