「不妊症の原因は?」「不妊症を予防する方法ってある?」などの疑問をお持ちではありませんか。
妊娠を望む夫婦のうち、10組に1組が不妊症といわれています。不妊症の要因は男女ともに存在し、加齢やなんらかの疾患により生殖機能が低下することが主な原因です。
妊娠率は年齢を重ねるごとに低下し、不妊症の原因となる病気の発症率は高齢であるほど増加します。また、肥満や喫煙習慣のある人は不妊症になりやすいと考えられています。
不妊症は、原因に応じた適切な治療が必要です。赤ちゃんを望む場合は、早めに検査や治療を開始することが重要となります。
この記事では、不妊症の原因について男女別に詳しく解説します。また、不妊症の治療方法や予防方法についてもお伝えしていくので、ぜひ参考にしてください。
そもそも不妊症の定義とは?
不妊とは、妊娠を望む男女が1年以上定期的に性交をしても妊娠しない状態のことです。不妊症は、治療を行わないと自然に妊娠する可能性が低い状態を指し、英語では「Infertility」と表されます。
男女が避妊しないで性交した場合、2年以内に約90%の確率で妊娠します。そのため、不妊症となる確率は約10%です。
不妊症の発症率は、男女の年齢によって大きく変化します。とくに女性の年齢が高いと、妊娠率の低下や妊娠に至るまでの期間が長くなる傾向があります。
一般的に、女性がもっとも妊娠しやすい年齢は20歳代がピークです。35歳を超えると妊娠率が急速に低下し、約30%が不妊症になるといわれています。
近年では晩婚化の影響で不妊症の割合が増加しており、約6組に1組が不妊症の検査や治療を受けています。
参照:文部科学省「健康啓発教材2021」
参照:恩賜財団済生会「不妊症」
参照:厚生労働省「総論0116不妊専門相談センター」
参照:聖路加国際病院「不妊外来」
参照:国立国際医療研究センター病院「不妊症について」
参照:兵庫医科大学病院「不妊症」
不妊症の原因
不妊の原因を詳しく確認していきましょう。
- 女性の場合
- 男性の場合
WHOの調査による不妊症の割合をランキングで確認してみると、以下のようになります。
- 1位 女性側の原因(41%)
- 2位 男性側の原因(24%)
- 3位 男女両方の原因(24%)
まずは、女性における不妊症の原因を詳しく解説します。
参照:文部科学省「健康啓発教材2021」
女性の場合
女性の不妊症は、以下のように要因がわけられます。
- 卵管因子:約35%
- 排卵因子:約25%
- 子宮因子:約15%
- 子宮頸管因子:約10%
卵管因子による不妊症がもっとも多く、子宮内膜症や性感染症、子宮筋腫などで卵管の機能が低下することが原因です。次に多いのが排卵因子で、加齢やストレス、多嚢胞性卵巣症候群などが原因として考えられます。
ストレスや不規則な勤務の多い職業も、不妊症の引き金になる場合があります。不妊症が多いといわれている職業は、美容師や看護師、保育士などです。
とくに、看護師は夜勤などの不規則な生活によってホルモンバランスの乱れやストレスを感じやすい傾向があります。
参照:慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト「不妊症」
参照:国立国際医療研究センター病院「不妊症について」
参照:東洋大学医学部専門診療学系産婦人科「不妊症とは」
参照:労災疾病等医学研究普及サイト「女性の深夜・長時間労働が内分泌環境に及ぼす影響に関する研究」
参照:日本産婦人科医会「不妊カップルに対する治療のアルゴリズム」
男性の場合
男性における不妊症の原因と割合は、以下のとおりです。
- 造精機能障害:82.4%
- 性機能障害:13.5%
- 精路通過障害:3.9%
男性側が原因の不妊症では、造精機能障害がもっとも一般的で約8割を占めています。造精機能障害には、無精子症や精子無力症、精子奇形症などが含まれます。
次に多いのが性機能障害で、射精障害や勃起障害などが原因です。精路通過障害は、精巣上体炎や射精管閉塞、逆行性射精などを指します。
造精機能障害の原因は不明とされていることがほとんどです。しかし、以下の要因が影響する可能性があります。
- 喫煙
- 飲酒
- ストレス
- 仕事
また、肥満や睡眠不足も精子の数や運動率を減少させる原因となります。
検査で原因が特定できない不妊症も存在し、割合は約20~25%です。原因不明の不妊症には、遺伝的要素が関係している可能性があります。父親が不妊症で治療を受けたのち子どもを出産した場合、その子どもに不妊症が遺伝する可能性があることがわかっています。
参照:こども家庭庁「男性不妊について」
参照:関西医科大学付属医療機関「男性不妊症」
参照:慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト「男性不妊」
参照:京都医療センター「男性不妊症」
参照:徳島生殖医療研究所「不妊症の原因と転帰 ~原因疾患、卵管因子、子宮因子~」
参照:東洋大学医学部専門診療学系産婦人科「不妊症とは」
参照:日本産科婦人科学会「男性不妊とその要因」
参照:J-STAGE「男性不妊症と遺伝」
不妊症の検査方法
女性の場合は、以下のような検査をします。
- 内診
- ホルモン検査
- 経膣超音波検査
- 子宮卵管造影検査
ホルモン検査では、血液を採取して甲状腺の機能やホルモンの分泌に問題がないかをチェックします。経膣超音波検査では、音波プローブを腟から挿入して感染症の有無や子宮、卵巣に異常がないかを確認します。
子宮卵管造影検査は、X線により子宮の形や卵管に詰まりがないか確認する方法です。
男性の場合は、以下の検査をします。
- 精液検査
- 泌尿器科的検査
精液検査では2~7日間の禁欲後に自宅または病院で精液を採取し、精子の数や運動率、精子の形態などを調べます。泌尿器科的検査は、超音波による陰嚢や精巣の観察、採血による内分泌検査などが主な内容です。
不妊症の検査は、女性の場合は産婦人科、男性の場合は産婦人科や泌尿器科などで行います。
参照:恩賜財団済生会「不妊症」
参照:杉山産婦人科「不妊検査」
参照:日本産科婦人科学会「不妊症」
参照:日本生殖医学会「Q7.不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?」
不妊症の治療方法
不妊の原因に応じて、以下のような治療を行います。
- タイミング法
- 排卵誘発法
- 内視鏡手術
- 人工授精
- 生殖補助医療
タイミング法は、不妊検査で問題がなかった場合に行われます。超音波検査により排卵日を正確に予測し、性交をする方法です。
排卵誘発法は、不妊症の原因が排卵にある場合に行われる治療です。内服薬や注射薬により卵巣を刺激し排卵を起こさせる方法で、妊娠率を高めるために使用されます。
内視鏡手術は卵管や子宮が原因である場合に行われ、子宮筋腫や子宮内膜ポリープの切除や癒着剥離などを治療します。人工授精は精子の所見がやや不良であったり子宮頸管が原因であったりする場合に、排卵日に合わせて精子を子宮内に注入する方法です。
不妊原因が不明な場合は、これらの方法を組み合わせて治療します。それでも妊娠に至らない場合は、生殖補助医療の体外受精や顕微授精を試みます。
不妊症は、早期に治療を開始することが重要です。とくに、35歳以上で妊娠を望む場合は不妊期間が1年に満たない場合でも、早めに医師に相談しましょう。
参照:日本産科婦人科学会「不妊症」
参照:日本生殖医学会「Q8.不妊症の治療にはどんな方法があり、どのように行うのですか?」
参照:兵庫医科大学病院「不妊症」
参照:国立国際医療研究センター病院「不妊症について」
不妊症の予防方法
不妊症を予防するには、以下に挙げる5つのことを心がけましょう。
- 体重を管理する
- たばこを吸わない
- 性感染症を予防する
- 月経を観察する
- 精子を良好な状態に保つ
男女ともに肥満や痩せすぎは生殖機能に影響を与えます。バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、過度なダイエットや食べ過ぎに気をつけましょう。
喫煙すると、妊娠するまでの期間が延びたり閉経年齢が早くなったりします。また、喫煙者は不妊症となる確率が吸わない人に比べ約2倍高くなることがわかっています。
性感染症は、女性が疾患すると自覚症状がない場合があるため注意が必要です。とくに、疾患率が増加傾向にあるクラミジア感染症は、炎症が広がることで不妊症を引き起こします。性感染症の予防には、コンドームを正しく着用することが大切です。
月経異常は不妊につながる可能性があるため、気になる症状があれば早めに産婦人科を受診しましょう。月経痛が普段よりも重い場合や経血量が多い場合は、子宮内膜症や子宮筋腫などが疑われます。
男性の場合は、精子をよい状態に保つ習慣が大切です。精子は熱に弱いため、サウナや長時間の入浴はなるべく避けるようにしましょう。
参照:文部科学省「不妊予防支援パッケージ」
参照:厚生労働省「性感染症」
参照:こども家庭庁「男性不妊の基礎知識 「二人」で治療に取り組むことが解決の近道にも」
参照:こども家庭庁「男性不妊について」
参照:不妊・不育とこころの相談室「喫煙と不妊症」
参照:岡山大学「喫煙と不妊症」
参照:日本医科大学付属病院「子宮内膜症が心配な方」
男女ともに不妊症の予防をすることが大切
不妊症の原因は男性と女性の両方にあり、とくに加齢は大きな要因のひとつです。女性が不妊症に陥る原因は卵管の異常が確率としては高く、男性の場合は造精機能障害が多く見られます。
不妊症の治療方法にはタイミング法や排卵誘発法などがあり、原因に合わせて適切な方法が選ばれます。不妊症を防ぐには、禁煙や性感染症の予防と基準的な体重を維持することが大切です。
近年、晩婚化の影響で不妊症に陥る人が増えています。妊娠に至るには、早期の検査や治療が重要です。性交しても、なかなか妊娠しない場合は早めに医師に相談しましょう。