2022.06.26 Sun

出生前診断後の中絶はいつまで?|時期による中絶手術の違い

出生前診断後の中絶はいつまで?|時期による中絶手術の違い


出生前診断を検討している人のなかには、中絶に関する不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。

実際に出生前診断を受けて染色体異常が判明した場合、中絶するかどうか重い決断に迫られることもあるかもしれません。検査結果が陽性だったとき、受けた人がどのような選択をしているのか、知りたい人も多いでしょう。

本記事では、出生前診断後の中絶率や中絶手術の方法、手術が受けられる妊娠週数などを解説します。出生前診断に伴う中絶への理解を深めるために、ぜひ参考にしてください。

また「出生前診断の倫理的問題」については、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてください。

出生前診断(NIPT)陽性者における染色体異常別の中絶率

出生前診断による中絶は倫理的問題も
出生前診断には染色体異常の可能性を調べる非確定検査と、染色体異常の確定診断が受けられる確定検査があります。

確定検査で染色体異常の確定診断を受けた場合の中絶率は90%前後です。ここでは、検査精度が高い非確定検査の新型出生前診断(NIPT)で検査できる、3つの染色体異常における陽性診断後の中絶率を紹介します。

・ダウン症候群(21トリソミー)の中絶率
・エドワーズ症候群(18トリソミー)の中絶率
・パトウ症候群(13トリソミー)の中絶率

厚生労働省と連携するNIPTコンソーシアムが実施した計1,556名のアンケート結果から、新型出生前診断(NIPT)の陽性者における中絶率をそれぞれ解説します。

ダウン症候群(21トリソミー)の陽性診断後の中絶率

アンケート結果では、新型出生前診断(NIPT)の診断後に妊娠を継続しなかったことを現す妊娠中断率(中絶率)は87.5%と示されています。しかし、この割合は実際には陰性だった疑陽性者や研究を途中で脱落し、中絶したかどうかがわからない人の数も含まれている数値です。

実際には、陽性者数の943名のうち偽陽性24名、研究脱落(中絶実施の確認が不可)34名、子宮内胎児死亡(IUFD)81名を差し引いた人数が実質的な中絶率を割り出す数と捉えられます。これをもとに計算すると、以下となります。

・対象となる陽性者数は943名 – 24名(偽陽性数) – 34名(研究脱落)= 885名
・885名のうち、IUFD者数は 81名のため妊娠の継続が可能であったのは804名
・妊娠中断数は774名のため、804名のうち774名が中絶を選択

つまり、実質的な中絶率は次のように捉えることもできます。

774名 ÷ (885名 – 81名) =96.3%

計算結果から、約96%の人が妊娠の継続が可能であっても中絶を選択していると見てとれます。

参照:厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について

エドワーズ症候群(18トリソミー)の陽性診断後の中絶率

アンケート結果では、妊娠中断率(中絶率)は60.3%となっています。しかし、エドワーズ症候群(18トリソミー)の中絶率もダウン症候群(21トリソミー)と同様に捉えて計算すると以下となります。

・対象となる陽性者数:470名 – 38名(偽陽性数) – 16名(研究脱落)= 416名
416名のうち
・IUFD者数:142名
・妊娠中断数: 251名

したがって、実質的な中絶率は次のように捉えられます。
251名 ÷ (416名 – 142名) = 91.6%

エドワーズ症候群(18トリソミー)においても、90%以上の人が中絶を選択していると計算できます。

参照:厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について

パトウ症候群(13トリソミー)の陽性診断後の中絶率

アンケート結果におけるパトウ症候群(13トリソミー)の妊娠中断率(中絶率)は、69.0%です。パトウ症候群(13トリソミー)の中絶率もダウン症候群(21トリソミー)と同様に捉えて計算すると、以下となります。

対象となる陽性者数:141名 – 55名(偽陽性数) – 2名(研究脱落)= 84名
84名のうち
IUFD者数:22名
妊娠中断数:58名

したがって、実質的な中絶率は次のように捉えられます。
58名 ÷ (84名 – 22名) = 93.5%

先述した2つの染色体異常と同じく、90%以上の人が中絶を選択していると考えられます。

参照:厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について

人工妊娠中絶はいつまで可能か

中絶ができる時期
中絶は、正しくは「人工妊娠中絶」といい、母体保護法によって中絶手術が受けられるのは妊娠22週未満と定められています

人工妊娠中絶は、母体外において生命を維持できない時期に、人工的に胎児を母体外に排出することを指します。妊娠22週以降での中絶は、いかなる理由であっても認められていません。

詳しくは後述しますが、人工妊娠中絶手術は母体に負担がかかる手術であり、妊娠11週までに受けることが望ましいとされています。そのため、中絶する場合は妊娠発覚から早い段階で判断することが求められます。

参照:公益社団法人日本産婦人科医会「人工妊娠中絶ができる条件とは何ですか?
参照:公益社団法人日本産婦人科医会「人工妊娠中絶の定義

中絶の手術方法と受けられる妊娠週数

初期中絶と中期中絶の違い
人工妊娠中絶の手術方法は妊娠週数によって以下の2つにわけられます。

・初期中絶
・中期中絶

それぞれの手術方法と受けられる妊娠週数を解説します。

初期中絶

初期中絶は、妊娠12週未満に行われる中絶手術です。子宮内の内容物を吸い出す吸引法か、内容物を掻き出す掻爬(ソウハ)法で行われます。いずれも全身麻酔をかけたうえで子宮頸管を拡張して行われる手術です。

初期中絶の場合は短時間で手術が終了するため、日帰りでも手術できます。胎児がまだ小さいため母体への負担が少ないのも特徴です。

中期中絶

中期中絶は、妊娠12~22週未満に受けられる中絶手術です。妊娠12週は妊娠4ヶ月のはじめの週に該当し、すでに胎児の体の各部位が成長しています。

中期中絶は、人工的に流産させる手術です。具体的には、薬剤を用いて人工的に陣痛を起こし、出産と同じような方法で胎児を娩出します。この際、胎児を娩出するために子宮頸管や子宮口を開く処置も行われます。

こうした術前処置は強い痛みを伴うことがあり、初期中絶よりも手術時間が長いため母体への負担も大きく、入院も必要です。

また、中期中絶の場合は術後に死産届と死産証書を役所に届け出る必要があります。

中絶手術が母体に与える影響

中絶手術が与える影響
人工妊娠中絶手術をすると、身体的な影響の他、精神的な面にも影響します。身体的な影響としては、主に以下の合併症の危険性が挙げられます。

・内容物遺残
・子宮損傷
・出血
・アナフィラキシー

人工妊娠中絶手術では子宮内を直接視認できません。そのため、取り除くべき組織の一部が残ってしまったり、手術時に子宮内膜を損傷して出血が起こったりする可能性があります。

また、麻酔薬や手術で使用した薬でアナフィラキシーを起こしたり、迷走神経反射で心拍数や血圧が低下したりすることもあります。

精神的な影響では、罪悪感や自己嫌悪、喪失感などを感じ、精神的に不安定になることも少なくありません。人工妊娠中絶を選択した場合、身体的なケアに加えてメンタルヘルスケアにも注意しましょう。

なお、「人工妊娠中絶をすると不妊症になる」と聞き、不安を抱えている人もいるかもしれません。こうした噂が広まったのは、まれに手術時に子宮内膜が傷ついたり、術後に合併症が起こることで不妊症になったりする可能性があるためです。実際には人工妊娠中絶手術が原因で不妊症になることは、ほとんどありません。

参照:石川県立看護大学「人工妊娠中絶を経験した女性の心理経過

中絶を選択肢とする場合の出生前診断(NIPT)の受検時期

出生前診断後の中絶は22週まで
人工妊娠中絶を一つの選択肢としたうえで新型出生前診断(NIPT)を受ける場合、妊娠10~16週頃の受検が一般的です。

新型出生前診断(NIPT)で陽性だった場合、確定検査を受けて染色体異常の診断を確定させる必要があります。確定検査の一つである羊水検査は、妊娠15週以降に受検できる検査です。

しかし、新型出生前診断(NIPT)の検査結果が届くまでの期間も考慮すると、妊娠10週を超えたらなるべく早めに新型出生前診断(NIPT)を受けたほうがよいでしょう。

万が一に備えて気持ちを整理する時間をなるべく長くとりたい場合は、妊娠6週目から受けられる早期NIPTの受検も有効です。

出生前診断で陽性結果がでた場合の中絶率は実質9割

出生前診断で陽性の結果がでた場合、実質9割以上の人が人工妊娠中絶を選んでいます。

どのような選択をするかは最終的にそれぞれの家庭や個人の判断に委ねられます。後悔しない選択をするためには出生前診断を受ける前に、中絶の選択肢についてパートナーと話し合っておくことが大切です。

また、早期NIPTであれば通常の新型出生前診断(NIPT)よりも早く検査結果が得られるため、より早い段階から話し合いができます。

平石クリニックでは、早期NIPTと通常の新型出生前診断(NIPT)どちらも実施しています。母体の心身への影響も考慮して早めに出生前診断を受けたいと考えている場合は、ぜひ平石クリニックへご相談ください。

NIPT平石クリニック

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NIPT平石クリニック

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