出生前診断を実際にどれくらいの人が受けているのか、同じ年代の人はどのような選択をしているのか、気になる人も多いでしょう。
出生前診断は、お腹の中にいる赤ちゃんの先天的な疾患を調べる検査です。赤ちゃんに先天性疾患が発生する確率は3~5%で、そのうちの25%がダウン症候群やエドワーズ症候群などの染色体異常とされています。
とくに、高齢妊娠の場合は先天性疾患を患う確率が上がることから、出生前診断を受ける人の割合が増加傾向にあります。
この記事では、年代別に見る出生前診断の受検率や検査の種類、安全性について解説します。これから出産を迎える人や出生前診断について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
出生前診断の認知度と受検者数は年々増加傾向にある
出生前診断を受ける妊婦の割合は、年々増えています。その背景には、高齢出産の増加とNIPT(新型出生前診断)をはじめとする出生前診断の普及が挙げられるでしょう。
近年では男女の晩婚化が進んだ影響により、3人に1人が35歳以上で出産しています。高齢出産は、赤ちゃんがダウン症候群やエドワーズ症候群などの先天的疾患を患う可能性が高まるため、多くの妊婦が不安を抱いています。それにより、赤ちゃんの健康状態を事前に確認したい人が増加しているのです。
NIPTは母子への負担が少なく、従来の検査に比べて早期から高精度な検査結果を得られることが特徴です。また羊水検査や絨毛検査では、赤ちゃんの染色体異常を確定的に発見できます。
このような出生前診断はテレビやインターネットを通じて広く認知され、検査可能な施設が増えました。多くの妊婦が気軽に検査を受けられるようになり、検査の機会がますます広がっています。
参照:厚生労働省「妊産婦の診療の現状と課題」
参照:厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について」
出生前診断の年代別受検割合
出生前診断を受ける人の年代別の割合は、以下のとおりです。
- 30代前半までの出生前診断受検割合:2割程度が受検
- 30代後半の出生前診断受検割合:4割近くが受検
- 40代以降の出生前診断受検割合:6割程度が受検
2020年度の厚生労働省の調査によると、妊婦の約4人に1人がなんらかの出生前診断を受けています。年代ごとに出生前診断の検査別の割合や傾向を詳しく紹介します。
参照:厚生労働省「女性から見た出生前検査」
30代前半までの出生前診断受検割合:2割程度が受検
30代前半までの妊婦で出生前診断を受ける割合は約10人に2人となっています。検査別の割合は以下のとおりです。
- 胎児超音波検査 9.1%
- コンバインド検査 2.8%
- クアトロテスト 4.2%
- NIPT(新型出生前診断) 2.4%
- 羊水検査 3.5%
- 絨毛検査 0.3%
30代前半までの妊婦は、受検者の約半数が超音波検査を実施しています。その他の検査を受ける妊婦は少ない傾向にあり、確定検査の羊水検査や絨毛検査は非常に低い数値です。
出生前診断は希望する妊婦であれば受検可能ですが、一般的には35歳以上の高齢出産の場合に推奨されます。その理由は、母親の加齢に伴って赤ちゃんに先天性異常が起こる可能性が高まるためです。
しかし、20代でも約1,000人に1人はダウン症候群の赤ちゃんを出産するといわれています。したがって、20代でも家族に遺伝性の疾患がある場合や超音波検査で異常が見られた場合、医師の判断により出生前診断が勧められることがあります。
周囲の家族や友人からの勧めやご自身の不安感などによって、20代の妊婦が出生前診断を受けるケースも少なくありません。
参照:日本産婦人科医会「15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について)」
30代後半の出生前診断受検割合:4割近くが受検
30代後半での出生前診断の受検率は、30代前半までに比べて増加しています。とくに、赤ちゃんの染色体異常を早期に発見できるNIPTの受検率が上昇傾向にあります。
30代後半の出生前診断の受検率は以下のとおりです。
- 胎児超音波検査 18.6%
- コンバインド検査 3.4%
- クアトロテスト 8.5%
- NIPT(新型出生前診断) 10.2%
- 羊水検査 4.2%
- 絨毛検査 1.7%
30代後半の妊婦において、もっとも多く実施されているのが胎児超音波検査です。NIPTの受検率も、35歳未満の年齢層と比較すると4倍以上に増加しています。
40代以降の出生前診断受検割合:約6割が受検
40代以降の出生前診断の受検率は約6割となっており、半数以上の妊婦が検査を受けています。40代以降の受検率は以下のとおりです。
- 胎児超音波検査 22.7%
- コンバインド検査 9.1%
- クアトロテスト 9.1%
- NIPT(新型出生前診断) 22.7%
- 羊水検査 15.9%
- 絨毛検査 4.5%
40代以降の妊婦において、もっとも多く実施されているのがNIPTと胎児超音波検査です。とくに、NIPTの検査率は30代以下の年齢層と比較すると大幅な増加がみられ、高齢出産でのニーズの高まりがうかがえます。
40代以降でダウン症候群の赤ちゃんが生まれる割合は、約100人に1人です。そのため、先天性異常を確定的に診断できる羊水検査や絨毛検査を受ける人の割合が30代に比べて増加しています。
出生前診断の種類とそれぞれの受検割合
出生前診断には以下の6つの種類があります。
- 【非確定検査】胎児超音波検査
- 【非確定検査】コンバインド検査
- 【非確定検査】クアトロテスト
- 【非確定検査】NIPT (新型出生前診断)
- 【確定検査】羊水検査
- 【確定検査】絨毛検査
出生前診断には、非確定検査と確定検査と呼ばれる2つの方法があります。非確定検査は、母子への負担が少ない検査方法です。
確定検査は赤ちゃんに少しの危険性を伴いますが、非確定検査よりも高い精度で先天性疾患を発見できます。
それぞれの特徴と受検率を詳しく解説します。
【非確定検査】胎児超音波検査
胎児超音波検査は、妊婦のお腹に機械をあてて赤ちゃんの画像をモニターに映し出す検査です。通常の妊婦健診の超音波検査とは異なり、赤ちゃんの臓器の形態や変化をより詳細に観察できます。
一般的に妊娠4ヶ月頃と5~6ヶ月頃、8ヶ月頃の3回程度、妊婦の希望に応じて実施されます。
胎児超音波検査の受検率は、他の非確定検査に比べて高いことが特徴です。30代前半までは9.1%、40代以降では22.7%の妊婦が受検しています。
胎児超音波検査のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・危険性が少ない ・他の検査と比較して安価で検査できる |
---|---|
デメリット | ・結果が確率で示されるため解釈が難しい ・異常が疑われた場合は確定診断が必要となる場合がある |
参照:兵庫医科大学「出生前診断についてキチンと知っていますか?」
【非確定検査】コンバインド検査
コンバインド検査は、超音波検査と血清マーカー検査を組み合わせた検査方法です。妊娠11~13週頃の、比較的早い時期に実施されることが特徴です。
超音波検査では、赤ちゃんの首の後ろのむくみの厚さや心拍数などを検査します。血清マーカー検査では、妊婦の血液中に含まれる胎盤由来の成分の濃度を調べます。
コンバインド検査の受検率は他の非確定検査に比べるとやや低く、30代前半までは2.8%、40代以降では9.1%です。
コンバインド検査のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・妊娠初期に検査できる ・危険性が少ない ・他の検査と比較して安価で検査できる |
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デメリット | ・結果が確率で示されるため解釈が難しい ・異常が疑われた場合は確定診断が必要となる場合がある |
参照:昭和大学横浜市北部病院「出生前検査外来」
【非確定検査】クアトロテスト
クアトロテストは母体血清マーカー検査のひとつで、妊婦の血液中に含まれる成分を測定する検査です。妊娠15~18週頃に行われることが一般的です。
血液中の4種類の成分を測定し、胎児にダウン症候群やエドワーズ症候群、開放性神経管奇形などの先天性疾患の可能性がないか調べます。また、妊婦の年齢や家族歴、妊娠週数などの情報も組み合わせて総合的に判断します。
クアトロテストの受検率は30代前半までで4.2%、40代以降では9.1%です。
クアトロテストのメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・危険性が少ない ・他の検査と比較して安価で検査できる |
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デメリット | ・結果が確率で示されるため解釈が難しい ・異常が疑われた場合は確定診断が必要となる場合がある |
【非確定検査】NIPT (新型出生前診断)
NIPTは、母体から少量の血液を採取することで染色体異常の可能性を診断する検査です。他の非確定検査に比べて精度が高く、実施施設も増加傾向にあります。
一般的には妊娠10週頃から検査ができますが、病院によっては早期NIPTにより妊娠6週からの診断も可能です。NIPTの受検率は30代前半までで2.4%、40代以降で22.7%となっています。
NIPTのメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・妊娠初期に検査できる ・危険性が少ない ・精度が高い |
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デメリット | ・費用が高い ・異常が疑われた場合は確定診断が必要となる場合がある |
参照:国立成育医療研究センター「NIPT」
【確定検査】羊水検査
羊水検査は、お腹に細い針を刺して羊水を採取し赤ちゃんの先天性異常を調べます。妊娠中期である15~16週頃の実施が一般的です。
羊水検査の受検率は30代前半までで3.5%、40代以降では15.9%となっています。
羊水検査のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・精度が高い ・検査結果が確定的 |
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デメリット | ・合併症の危険性がある ・費用が高い ・検査時期が遅い |
【確定検査】絨毛検査
絨毛検査は、絨毛を採取し赤ちゃんの先天性異常を調べます。
ダウン症候群やエドワーズ症候群、パトウ症候群などの先天性疾患を早期に発見できることが特徴です。一般的に妊娠11~14週に実施されます。
絨毛検査における絨毛を採取する方法には、経腹法と経腟法があります。
- 経腹法:お腹に細い針を刺し絨毛を採取
- 経腟法:膣からカテーテルを挿入し絨毛を採取
受検率は30代前半までで0.3%、40代以降で4.5%となっており同じ確定検査の羊水検査より低い数値となっています。
絨毛検査のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・妊娠初期に検査できる ・精度が高い ・検査結果が確定的 |
---|---|
デメリット | ・合併症の危険性がある ・費用が高い ・実施施設が限られている |
出生前診断を受けるうえで知っておくべき注意点
出生前診断は赤ちゃんの病気や異常を調べる大切な検査ですが、いくつかの注意点があります。
- 検査の種類により精度に差がある
- 検査により流産や感染症のリスクがある
- 検査で検出できる病気は限られている
検査の種類により精度に差がある
前述のとおり出生前診断にはさまざまな種類があり、それぞれの検査で診断できる病気や精度に違いがあります。以下の表に、主な検査の種類とダウン症候群に関する検査の精度をまとめました。
検査の種類 | 診断できる病気 | 精度(ダウン症候群) |
---|---|---|
【非確定検査】コンバインド検査 | ・ダウン症候群 ・エドワーズ症候群 ・パトウ症候群 | 75~80% |
【非確定検査】クアトロテスト | ・ダウン症候群 ・エドワーズ症候群 ・開放性神経管欠損症 | 80% |
【非確定検査】NIPT(新型出生前診断) | ・ダウン症候群 ・エドワーズ症候群 ・パトウ症候群 | 99% |
【確定検査】羊水検査 | ・ダウン症候群 ・エドワーズ症候群 ・パトウ症候群 ・ターナー症候群 ・クラインフェルター症候群 ・その他 | 100% |
【確定検査】絨毛検査 | ・ダウン症候群 ・エドワーズ症候群 ・パトウ症候群 ・ターナー症候群 ・クラインフェルター症候群 ・その他 | 100% |
繰り返しにはなりますが出生前診断には、非確定検査と確定検査の2種類があります。
非確定検査は、検査方法によって精度が異なります。その中でも、NIPTは99%以上の確率で先天性異常を発見できる、もっとも精度の高い検査です。
一方、確定検査である羊水検査や絨毛検査では、染色体異常を100%の精度で診断できます。
参照:J-STAGE「知っておきたい最近の「出生前検査」をめぐる状況」
検査により流産や感染症のリスクがある
出生前診断の種類によっては、母子に危険が及ぶ可能性があります。とくに、確定検査の羊水検査や絨毛検査はお腹に針を刺して検査するため、以下のような合併症の危険性があります。
- 破水
- 出血
- 子宮内感染
- 血管や腸管などの他臓器損傷
- 流産や死産
流産や死産の割合は羊水検査で約0.3%、絨毛検査では約1%です。一方、非確定検査はエコーや採血により検査するため、合併症の危険性はほとんどありません。
参照:母子医療センター「出生前検査、拡大新生児スクリーニングをお考えの方へ」
検査で検出できる病気は限られている
出生前診断をすればすべての先天性疾患が検出できるわけではありません。先天性疾患にはさまざまな病気がありますが、出生前診断でわかるのはそのうちの4分の1といわれています。
染色体の数ではなく形に異常がある場合や、非常に小さな遺伝子異常である場合は検出できないことがあります。また、原因が特定できない先天性疾患や視覚障害、聴覚障害や発達障害などは出生前診断ではわかりません。
参照:妊娠中の検査に関する情報サイト「出生前検査でわかること」
出生前診断の割合は年代とともに増加している
妊婦の高齢化が進み、出生前診断を受ける人は増えています。とくに、40代以降では過半数の人が検査を受けています。
出生前診断の種類は、安全性の高いものから羊水検査のようにわずかに危険が伴うものまでさまざまです。中でもNIPTは、母体への負担が少なく妊娠初期から高い精度で染色体異常を調べられる検査として注目されています。
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