「寝汗で服や髪の毛がびしょ濡れになる」「夜中に寝汗で起きる」など、妊娠中の寝汗に悩んでいませんか?
妊娠すると、自律神経の乱れや女性ホルモンの影響により体温が上昇します。とくに妊娠初期は、女性ホルモンが大きく変化するため寝汗をかきやすい状態です。
大量の寝汗をかくと、体の冷えやかゆみなどの肌トラブル、睡眠の質が低下する原因になります。妊娠中の健康を維持するためには、なぜ寝汗をかくのかを理解し、適切な対策を実施することが大切です。
この記事では、妊娠中に寝汗をかく理由と対処法について具体的に解説します。ストレスや不安を解消し心地よく妊娠期間を過ごすために、詳しく確認していきましょう。
妊娠中に寝汗をかく原因
妊娠中に寝汗をかく原因は、主に以下の3つです。
- 代謝の上昇
- 血液量の増加
- ストレスの増加
具体的な理由を見ていきましょう。
代謝の上昇
妊娠すると、ホルモンバランスの変化により代謝が上昇します。ホルモンバランスの変化は、妊婦の体が胎児の育成に適した子宮環境を作るために、ホルモンの分泌量が変動することにより起こります。
妊娠維持に必要なhCGと呼ばれるホルモンは、甲状腺機能を刺激して代謝を上昇させることが特徴です。また、プロゲステロンと呼ばれるホルモンは基礎体温を上げる働きがあります。
hCGホルモンは、妊娠初期に急激に上昇することが特徴です。妊娠5週あたりから分泌量が上昇し、妊娠8~10週でピークとなるため妊娠初期には寝汗が増えることが考えられます。
一方プロゲステロンは、妊娠初期から後期にかけて徐々に上昇することが特徴です。妊娠後期の寝汗は、プロゲステロンによる影響や乳腺の発達、皮下脂肪の増加により代謝が上がることなどが理由として考えられます。
参照:岡山大学「ヒト絨毛性ゴナドトロピン, HCG (human chorionic gonadotropin)」
参照:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「2021年度市民公開講座~女性特有の睡眠の悩み~②」
血液量の増加
妊娠中は、胎児への栄養供給や分娩時の出血に耐えるために血液量が増加します。とくに、妊娠中期から後期にかけて急激に増加することがわかっており、妊娠32週目以降では妊娠前と比較して40~50%増加します。
血液量が増加すると、全身に血液を循環させるために重要となるのが心拍数です。妊娠中は血液量の増加に伴い、心拍数も妊娠前より20%増加します。
また、心拍数を増加させるためには体温の上昇が必要です。血液が循環しやすい環境は、汗を作り出す汗腺の働きを活発にするため寝汗をかく原因につながります。
参照:J-STAGE「抗菌化学療法:診断と治療の進歩」
参照:J-STAGE「母体に起こる妊娠・出産時の血行動態変化」
参照:J-STAGE「心力学で紐解く妊娠の循環動態」
参照:国立循環器病研究センター「周産期心筋症」
ストレスの増加
ストレスの増加は自律神経に影響を及ぼし、寝汗をかく原因となります。妊娠中は体の変化や出産への不安からストレスを感じやすく、自律神経が乱れやすい状態です。
自律神経は呼吸や体温など体の働きをコントロールする神経で、交感神経と副交感神経から成り立っています。ストレスを感じると交感神経が優位に働くようになり、体温や血圧を上昇させて発汗を促します。
また、寝汗による睡眠不足はコルチゾールの分泌量を減少させる要因の一つです。コルチゾールはストレスを和らげる作用があり、慢性的なストレスを感じると過剰に分泌します。しかし、過剰な分泌が続くと次第に分泌量が減少し、ストレスの影響を受けやすくなります。
しっかりと睡眠をとるためには、適切な寝汗対策を実施することが大切です。
参照:J-STAGE「ストレス性体温上昇の神経機序」
参照:京浜保健衛生協会「39.緊張状態による高血圧」
妊娠中の寝汗の対策方法
妊娠中のひどい寝汗には、以下の対策が有効です。
- 風呂温度をぬるめにする
- パジャマを替える
- 寝具を見直す
- 室内環境を整える
風呂温度をぬるめにする
お風呂の温度をぬるめに設定することで、寝汗を防止できる可能性があります。温かいお風呂に入ると血流が促進されて体温が上昇し、入浴後は上がった体温を下げようとして汗をかきます。
体温の上昇を防ぐためには、湯船につかる時間を短くして温度を下げることが有効です。また、寝る直前の入浴は体温が下がらず、交感神経も刺激されるため睡眠中に汗をかく原因となります。
そのため、入浴は寝る1~2時間前に済ませ、入浴温度は38~40℃で10~15分程度つかるようにするとよいでしょう。
そして、お風呂上りは汗をかくため体が冷えやすい状態です。妊娠中に体が冷えると、早産や微弱陣痛など出産時に異常をきたす恐れがあります。入浴後は汗をしっかりと拭き取り、体が冷えないよう気を付けましょう。
参照:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「ぐっすり眠るためのパーフェクトな入浴法とは」
参照:産業医科大学「産業医大通信」
パジャマを替える
汗を吸いやすいパジャマに変えることで、妊娠中の寝汗による不快感を防げます。
妊娠中は、自身や胎児の健康維持のために体を冷やさないようにすることが大切です。しかし、着こみすぎると寝汗をかきやすくなり、かえって体を冷やしてしまいます。
そのため、パジャマは通気性と吸収性に優れたシルクやコットンなどの天然素材のものを着手するのが推奨されます。
下半身が冷える場合は、靴下やレッグウォーマーを着用しましょう。妊娠中は筋肉の低下や腹部の膨張で骨盤内の血流が悪くなり、下半身が冷えやすくなるといわれています。コットンなどの蒸れにくい素材で、締め付けずにゆったりと着用できるものがおすすめです。
また、大量の寝汗を放置するとあせもなど皮膚トラブルの原因に繋がります。寝汗をかいたらすぐに着替えられるように、替えのパジャマを枕元に置いておくとよいでしょう。
参照:J-STAGE「初産婦における体温低下と切迫早産の関連性について」
寝具を見直す
寝具は、汗を吸いやすいコットンやシルク素材がおすすめです。また、除湿シートを活用して寝具の湿気を取り除くことも寝汗対策として有効です。
ナイロンやポリエステル素材のシーツは、ひんやりとした肌触りで寝汗対策に適していると思われるかもしれません。しかし、吸水性や吸湿性が低い特徴があり、汗を吸い込まず体が冷える原因になることがあります。
頭部や上半身などを部分的に冷やしたいのであれば、氷枕やジェルパットを使用するとよいでしょう。ただし、長時間の使用は体の冷えにつながるため、注意が必要です。
室内環境を整える
妊娠中の寝汗を防止するには、部屋の温度や湿度を快適に保つことも大切です。快適に過ごせる室内の温度は体温の-10℃といわれており、夏場なら28℃、冬場なら20℃に保つようにしましょう。夏場は湿度を45~60%、冬場なら55~65%にするのが適切とされています。
体温は汗が蒸発することで下がりますが、湿度が高いと汗が蒸発しにくい状態となり、寝汗の原因につながります。
また、温度や湿度が高いとつわりの悪化や早産の危険性が高まることも考えられるため、室内環境を適切な状態に調整して寝汗を防止しましょう。
参照:慶応義塾大学保健管理センター「熱中症の予防」
参照:東京医科歯科大学「「暑すぎても寒すぎても赤ちゃんが早く産まれる」 【藤原武男 教授】」
参照:働く女性の心とからだの応援サイト「働きながら安心して妊娠出産を迎えるために」
妊娠中の寝汗はいつからいつまで続く?
妊娠中の寝汗は妊娠初期に始まり、妊娠中期から後期にかけて改善する傾向があります。妊娠が進むにつれ、寝汗の要因として考えられるhCGホルモンの分泌量が低下するためです。
とくに、妊娠15週以降の安定期に入れば基礎体温の上昇が治まり、低温を維持するようになります。hCGホルモンの分泌が落ち着くことで自律神経の乱れやつわりも治まり、ストレスの軽減にもつながるでしょう。
ただし、寝汗の改善時期には個人差があり、妊娠後期や出産まで症状が続く人もいます。一般的には、産後になるとホルモン値が妊娠前に戻るため症状が落ち着くとされています。
寝汗は妊娠維持のために重要な現象で、ホルモンによる体温の上昇が原因であることがほとんどです。しかし、産後になってもひどい寝汗が続く場合や他の症状も伴う場合は、甲状腺ホルモンや血液の疾患、感染症などが疑われます。
たとえば、甲状腺に異常が生じるバセドウ病は20~40代女性に多く見られ、のどの腫れや動悸を伴うことが特徴です。不安な症状がある場合は、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
参照:長崎大学病院 皮膚科・アレルギー科「汗の病気」
参照:京都医療センター「甲状腺の病気について」
参照:慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト「甲状腺機能亢進症・別名:バセドウ病」
妊娠中の寝汗はホルモンバランスの変化などが原因
妊娠中の寝汗は、ホルモンバランスの変化による代謝の上昇や血液の増加、ストレスなどが原因です。寝汗を放置すると、体の冷えや自律神経の乱れに繋がります。
そのため、ぬるめのお湯に浸かり体温の急激な上昇を抑えたり、パジャマや寝具の素材を変えたりして対処することが大切です。
ただし、甲状腺機能の疾患や感染症などでも寝汗をかくことがあります。とくに、妊娠後期のひどい寝汗や出産後でも症状が改善しない場合は、医師に相談することをおすすめします。
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