おりものは女性の健康を守るうえで重要な役割を担っており、ホルモンバランスの変化や病気などを判断するバロメーターにもなります。
本記事ではおりものの定義や生理周期による変化、年齢ごとの特徴、おりものからわかる病気の可能性を解説します。
そもそもおりものとは?
おりものとは、子宮や膣内から分泌され体外に流れ出た分泌液の総称です。膣内の潤いを保つとともに、細菌が膣を通して侵入・繁殖するのを防ぐ自浄作用も担っています。また、排卵期には精子が子宮までスムーズに移動できるよう手助けする役割があります。女性の健康や妊娠において重要な役割を担っている大切なものです。
生理周期によっておりものの状態や出る量は異なり、匂いや量、出る頻度にも個人差があります。また、病気によっておりものの状態が変化することもあるため、健康管理にも活用できます。
生理周期によるおりものの変化
おりものは生理周期によって以下のように変化します。
周期 | おりものの状態 |
---|---|
卵胞期 | 量は少ない。生理直後は茶色っぽい。粘性はあまりなくさらっとしている。 |
排卵期 | 最も量が多い。匂いはあまりなく水っぽい。 |
黄体期 | 排卵期から徐々に量が減少する。やや匂いが強く、粘性があり白っぽい。 |
生理前 | 再び量が増える。匂いが強く、粘性があり白っぽい。血が混ざり茶色っぽくなることもある。 |
それぞれの特徴を解説します。
卵胞期
卵胞期は生理直後から排卵期までの期間にあたります。生理直後のおりものは残った経血が混ざりやすく、茶色っぽい色をしています。出血がない場合は透明で、粘性があまりなくさらさらした状態が特徴です。
この時期のおりものの匂いはあまり強くありません。排卵期に近づくにつれて量が増えていきます。
排卵期
排卵期は卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの分泌量が増える時期です。びよーんと伸びる粘性のあるものが出るようになり、とくに排卵が起こる2~3日間はおりものの量が最も多くなります。
匂いはあまりなく、水っぽいおりものがドバッと出ることがあります。毎日出るので気になるという人もいるでしょう。
この時期のおりものは透明のゼリー状ですが、排卵出血に伴い血が混ざることもあります。中間期出血と呼ばれる生理的な現象であり、あまり心配ありません。
黄体期
黄体化ホルモンの分泌量が増える黄体期には、粘性が強く白っぽいおりものが出るようになります。量は徐々に減少しますが、粘性があるため下着につくと不快に感じやすい時期です。また、匂いがやや強くなります。
生理前
生理前になると再び量が増え、匂いの強いおりものが出るようになります。黄体期と同じく粘性が強く白っぽい状態です。生理が始まる数日前からは血が混ざった茶色っぽいおりものが出ることもあります。
おりものの量は年齢によって変わる
おりものの量は女性ホルモンによる影響を受けるため、以下のように年齢によって変化します。
年齢 | 女性ホルモンの分泌 | おりものの量 |
---|---|---|
初潮~10代 | 女性ホルモンの分泌が高まる。分泌量は安定しない。 | おりものの分泌がはじまり、徐々に量が増えはじめる。女性ホルモンと同じく分泌量は安定しない。 |
20代~30代 | 女性ホルモンの分泌が最も多くなる。 | おりものの量がピークを迎える。生理やおりものの周期も安定しやすい。 |
40代~ | 女性ホルモンの分泌量が少しずつ減少する。 | 少しずつおりものの量が減少する。生理やおりものの周期が不規則になりやすい。 |
閉経後 | ほとんど分泌されなくなる。 | おりものが出なくなる。 |
上記のように、女性ホルモンの分泌量にあわせておりものの量は増減します。閉経後はおりものが分泌されなくなるため、膣内の乾燥や自浄作用の低下によるトラブルが起きやすくなります。
おりものからわかる病気の可能性
おりものは女性の健康状態を示すバロメーターにもなります。量や状態が以下のように変化していると、病気の可能性が考えられます。
- おりものに色がついている
- おりものの匂いが臭い
- おりものの量が増える
- おりものがポロポロしている
おりものの特徴別に、考えられる病気を解説します。
おりものに色がついている
おりものは透明か白っぽい色をしていますが、以下のような色がついている場合は病気の可能性があります。
色 | 考えられる病気 |
---|---|
灰色~白 | 細菌性膣症、カンジダ膣炎、子宮内膜炎 |
ピンク | 子宮頸管ポリープ、クラミジア頸管炎 |
黄色・黄緑色 | 腟トリコモナス症 |
おりものの色によって考えられる病気は異なります。排卵出血や生理前に血が混ざってピンクや茶色っぽくなったり下着につくと黄色っぽく見えたりするなど、問題ないケースもあります。
病気の場合、おりものの色の変化以外にもかゆみや下腹部痛などの症状があらわれるケースがほとんどです。また、血が混ざったおりものが長く続くなら子宮頸がんや子宮体がんなどの病気の他、妊娠中だと流産の可能性もあります。早めに婦人科へ相談しましょう。
おりものの匂いが臭い
一般的に、おりものは健康な状態であればほぼ無臭、もしくは少し酸っぱい匂いがします。生理周期によっても異なるため、生理前になると匂いを強く感じることも少なくありません。
しかし、生理周期に関係なく匂いが強くなったり、明らかに悪臭だと感じたりするなら病気の可能性があるため注意が必要です。たとえば、腟トリコモナス症や細菌性腟症では魚のような生臭い匂いが強くなることがあります。
病気が原因で匂いが強くなっている場合、灰色や黄緑色などになるといった色の変化もみられます。いつもと違う匂いがしていたら病気の可能性を考慮しましょう。
おりものの量が増える
先述した通り、おりものの量は生理周期によって変化します。生理周期にあわせて量が増えているなら病気の可能性は低いでしょう。また、妊娠すると生理後も女性ホルモンの分泌が続くため、妊娠初期症状のひとつとしておりものの量の増加がみられます。
しかし、生理周期に関係なく毎日大量に出ている場合は注意が必要です。たとえば、水っぽい状態のおりものがよく出るなら、クラミジア感染症や細菌性膣症などの可能性があります。また、匂いや色の変化がなく量だけ増えていると子宮腟部びらんの可能性も考えられます。
女性ホルモンの分泌量が減る更年期や閉経後におりものが増えた場合、体になんらかの異常が起きているサインです。子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの婦人科系の病気の可能性があります。尿漏れのように出たりズボンにまでしみるほど出たりするのであれば、一度きちんと検査を受けることをおすすめします。
おりものがポロポロしている
ポロポロとしたおりものが出ているなら、カンジダ膣炎の可能性があります。カンジダは膣内の常在菌の一種です。なんらかの原因で増殖するとカンジダ膣炎を発症し、膣内部や外陰部の強いかゆみやヒリヒリ感などの症状があらわれます。
おりものは白く濁り、酒粕やカッテージチーズのようにポロポロとした形状になるのも特徴です。カンジダ膣炎は風邪でストレスなどで体の抵抗力が低下したりホルモンバランスが崩れたりすると発症しやすい病気です。おりものの変化とともにかゆみや痛みを伴う場合は、症状が強くなる前に婦人科へ相談しましょう。
おりものへの理解を深めて身体の状態を把握しよう
おりものは生理周期にあわせて分泌されるものであり、女性の健康を守るために大切な役割を担っています。女性ホルモンの分泌に応じておりものも分泌されるため、量や周期は年齢によって変化するのが特徴です。
量や匂いには個人差がありますが、あきらかに大量な場合や匂いが強い場合は病気が関係している可能性があります。病気に早く気づくためにも、普段から自分のおりものの状態を把握しておくことが大切です。おりものの色や匂い、量などがいつもと違うと感じたら、早めに婦人科を受診しましょう。