妊婦様からのご相談
21,18,13トリソミー以外のトリソミーだと、生まれてくる可能性がほぼ無いと聞きました。
それなら全染色体検査をする意義は無いように感じます。
全染色体検査の意義は何ですか?
ご相談をお受けして
1.全染色体検査とは?
「全染色体」とは、字のごとく全ての染色体です。
具体的には、1〜22番までの数字が付く「常染色体」と、XやYからなる「性染色体」を指します。
各染色体は、父親と母親から1本ずつ受け継いだ2本がペアとなって機能します。
本数は、常染色体44本(22組)+性染色体2本(1組)=計46本(23組)です。
「全染色体検査」とは、これら全ての“数を調べる検査”です。
※染色体は“数の異常”が起こることもあれば、“構造の異常”が起こることもあります。
構造(形)の異常は微小欠失検査に該当します。
2.全染色体検査を受ける人は多い?
全染色体検査(Bプラン)を選択される方はあまり多くありません。
21,18,13トリソミー・性染色体を調べる基本検査(Aプラン)。
もしくは
全染色体・性染色体のトリソミー、微小欠失を調べる微小欠失検査(Cプラン)。
どちらかを選択される方がほとんどです。
理由はご相談者様のおっしゃる通り、
「21,18,13以外の番号でトリソミーだと出生しないなら、全染色体検査の意義を感じない」
とお考えの方が多いためだと思われます。
お考えとしてごもっともです。
1点補足いたしますと、そちらは「完全型」のトリソミーだった場合です。
「モザイク型」のトリソミーだった場合には、出生につながる可能性があります。
3.完全型、モザイク型とは?
人間の細胞は60兆個もあり、そのひとつひとつに46本の染色体が存在します。
「完全型」の○トリソミー(例:ダウン症は21トリソミー)とは、各細胞内にある○番染色体がすべてトリソミーの状態です。
「モザイク型」のトリソミーとは、正常な○番染色体の入った細胞もあれば、異常(つまり○番トリソミー)もある状態です。
つまり、「モザイク」とは正常染色体とトリソミーが混在している状態のことです。
なお、完全型かモザイク型かは、NIPTではわかりません。
NIPTで陽性と出たのち、確定検査(絨毛検査または羊水検査)を受検することではっきりします。
4.全染色体検査はどのような方に意義がある?
21,18,13番以外の番号で完全型トリソミーがあると、出生に至りません。
では、全染色体検査はどのような方にとって意義があるのでしょうか。
それは、例えば流産を繰り返してこられた方(習慣流産の方)です。
染色体異常があった場合、流産してしまう可能性が高いことが知られています。
受検者様の中には、残念ながらNIPTの結果が届くまでに流産に至ってしまうケースもあります。
そうなった場合、後からNIPTの結果が「陽性」だったと知ることになります。
つまり、流産に至った原因が染色体異常だったとはっきりできる、という利点があります。
流産された方は、その原因が何だったのか、妊娠期間の過ごし方が何か悪かったのか、と何年も自責の念で辛い思いをされるといいます。
大切な赤ちゃんがいなくなってしまう悲しみは計り知れません。
原因がはっきりしていることで、これは赤ちゃんの運命だったのだと、いつか受け入れられるきっかけになるのではないでしょうか。
流産されたあとに原因をお調べすることも不可能ではありませんが、お気持ち的に現実的ではないでしょう。
したがって、一部の受検者様にとっては全染色体検査の意義はあると考えられます。
ご相談をふりかえって
「全染色体検査」というネーミングですが、全染色体検査は全ての染色体異常を見つけられる検査ではありません。
前述の通り、全染色体の“数の異常”に限った検査です。
ここで染色体異常の内訳をご紹介します。
完全型トリソミーであっても生まれてこられる21,18,13番トリソミー(数の異常)で、染色体異常の約70%を占めます。
性染色体のトリソミーも含めると81〜83%です。
残りの17〜19%のなかに21,18,13番以外のトリソミーや、微小欠失が含まれるということです。
数の異常(トリソミー検査)は母体年齢に比例してリスクも増します。
構造の異常(微小欠失検査)は頻度としてはごく少ないですが、母体年齢に関係せず起こります。
どこまでの情報を持っていれば安心できるか、パートナー様とお話されてみてください。
また、よろしければ受付センターや認定遺伝カウンセラーとの電話相談もご利用ください。
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