はじめに
『上の子がダウン症だと、次子にも再発リスクあり?① ~妊娠中の場合~』では、
・染色体異常の多くは遺伝しないこと
・染色体異常は細胞分裂の際に起こる突然変異が原因であること
・一般的には次子に遺伝するリスクは低く、あまり心配する必要はないこと
をお伝えしました。
こちらではさらに踏み込んで、
・医学的に起こりうる例外的なケース
・「ダウン症候群」「エドワーズ症候群」「パトー症候群」それぞれの再発リスク
・今後きょうだいの妊娠を考えるにあたり再発リスクを調べる方法はあるのか
について詳しくご説明いたします。
専門的で複雑な内容にはなりますが、あまり知られていない内容かと思います。
悩んでおられるどなたかのお役に立てると幸いです。
1.《ダウン症候群》の再発リスクがあるのはどのタイプ?
①ダウン症候群におけるパターン(核型)の内訳
ダウン症候群(21トリソミー)は染色体の「パターン(核型)」によって
・トリソミー型(標準型)
・転座型
・モザイク型
の3つに分けられます。
ダウン症候群におけるそれぞれの割合:トリソミー型(約95%)、転座型(約4%)、モザイク型(約1%)
このうち次子への再発リスクがあるのが、上のお子様のパターン(核型)が「転座型」だった場合です。
ですが、上のお子様が「転座型」であれば必ずしも次子にリスクがあるわけではありません。
具体的にご説明します。
②「転座型」の再発リスク
上のお子様がダウン症候群で、染色体のパターンが「転座型」 である場合、ご両親の核型によって再発リスクが認められます。
■両親のどちらにも染色体に異常なし
⇒再発頻度は一般的な人々と同じ。(特に再発リスクが上がるわけではない。)
■両親のどちらかが転座型保因者(※1)
⇒次子に同じダウン症候群を発症する可能性が一定数(※2)認められる。
これらの割合は半々ずつといわれています。
※1 保因者とは、疾患の原因遺伝子をもっているけれど発症していない人のこと。
ご両親ともに健康で無症状であっても転座保因者という可能性があり、また、それはご両親の年齢に関係しません。
※2 ご両親の染色体の組合せ次第で発症する確率は変わるため、一概にどの程度と明示できるデータはありません。
例えば、両親のどちらかが14番と21番染色体の転座をもっていた場合、お子さんがダウン症候群となる確率は1/6です。1/6は正常、1/6は親御様と同じ転座保因者、他3/6つまり半数は流産という内訳になります。
つまり、上のお子様が転座型によるダウン症候群で、且つご両親のどちらかが転座型保因者の場合に、次子への再発リスクが認められるのです。
③両親のパターン(核型)の調べ方
○どのようにしてパターン(核型)を調べるのか
「G-band」や「 G分染」と呼ばれる一般的な「染色体検査」にておこないます。
○ どこで検査できるのか
「遺伝外来」や「遺伝カウンセリング」がある病院。(遺伝外来、遺伝診療科、遺伝子診断科、臨床遺伝医療 等、施設によって呼び方は様々です。)
また、不妊治療をおこなっている施設でも調べることがあるようです。
専門職である「臨床遺伝専門医」や「臨床遺伝カウンセラー」に再発リスクをご相談されることを推奨します。
※また、症状を伴わない方は疾患とみなされないため保険適用外、もしくは、検査自体受けられない可能性もあります。
④「トリソミー型(標準型)」と「モザイク型」の再発リスク
一方、上のお子様がダウン症候群で、染色体のパターン(核型)が「トリソミー型」「モザイク型」の場合、次子にも遺伝する確率は以下の通りです。
「トリソミー型(標準型)」
年齢における頻度の2倍程度とされている
35歳未満では1%(年齢によって変動しない)
35歳以上では通常の年齢別頻度の2倍程度(年齢によって変動する)
「モザイク型」
年齢における頻度の2倍程度とされている
(上記のトリソミー型とほぼ同じことがいえる。)
ここまでダウン症候群の再発リスクをご説明してきました。
2.《エドワーズ症候群》《パトー症候群》の場合
染色体異常による障害において、出生頻度の頻度の高い順に
・ダウン症候群(21トリソミー)
・エドワーズ症候群(18トリソミー)
・パトー症候群(13トリソミー)
といわれております。
「エドワーズ症候群」「パトー症候群」についてもみていきましょう。
①エドワーズ症候群(18トリソミー)におけるパターンの内訳
・トリソミー型(標準型)……約93.8%
・モザイク型……約4.5%
・部分トリソミー型……約1.7%
②パトー症候群(13トリソミー)におけるパターンの内訳
・トリソミー型(標準型)……約75%
・転座型……約20%
・モザイク型……約5%
パトー症候群においても「転座型」があります。
両親のどちらかが転座の保因者であれば、ダウン症候群と同様に再発率は高くなります。
ですが、「転座型」のパトー症候群は妊娠初期に流産する可能性が高いため、出生にいたる可能性は低いと考えられています。
③エドワーズ症候群・パトー症候群の再発リスク
第一子がエドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)だった場合の次子への再発率はいずれもおよそ1%です。
ご相談をふりかえり
上の子がダウン症だと、次子にも再発リスクあり?① でも書かせていただきましたが、上のお子様が染色体異常による疾患をお持ちでしたら、次のお子様のこともご心配になるのは自然です。
妊娠してから調べる手段はあれど、妊娠するまでに再発リスクを知ることはできないのだろうか。そう思われる方も少なくないのではないでしょうか。
インターネットや書籍を調べても、なかなかこれという情報に行きつきませんでした。
ある程度のリスクを把握された上で、安心してご妊娠に向かうことができたらと願っております。
〜こちらはご相談者様のプライバシー保護の為、個人情報が特定される部分に関しましては削除ならびに一部変更させていただいております事をご了承ください。〜
参考:「出生前診断の現場から 専門医が考える『命の選択』」室月淳著 集英社発行
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