妊婦様からのご相談
NIPTの結果、陽性の項目がありました。
確定診断が必要とのことですが、「羊水検査」と「絨毛検査」はどう違うのですか?
どちらを受けてもよいのでしょうか?
ご相談をお受けして
ご承知の通りNIPTの陽性判定は可能性に過ぎません。※
確実な結果を知るためには「羊水検査」もしくは「絨毛検査」による確定診断が必要です。
※NIPTの陰性的中率は99.9%以上ですので、陰性の場合には確定診断の必要がありません。
検査の概要
まずは、それぞれどのような検査なのか簡単にお話いたします。
▶︎検査の方法
「羊水検査」では、羊水から羊水内の物質や胎児の細胞を採取します。
「絨毛検査」では、絨毛という胎児の胎盤になる前の組織を採取します。
母親の腹部に穿刺(せんし:お腹に針を刺すこと)する点はいずれの検査でも同じです。
※絨毛検査は「経膣法」をとる場合もあります。
超音波で、胎児の発育状況や位置を確認しながら慎重におこなわれます。
そして、採取した胎児の細胞を培養(数を増やすこと)したのち、顕微鏡下で観察します。
※絨毛検査においては十分な検体量が採れた場合、培養の必要がなく直ぐに検査ができます。
▶︎検査の時期
検査の時期には大きな違いがあります。
羊水検査……妊娠15-18週頃(一般的には妊娠16週頃)
絨毛検査……妊娠10-14週頃(一般的には妊娠11-13週頃)
絨毛検査は、妊娠の比較的早い時期に結果が出るのが利点です。
続いて、検査対象や注意点についてお話いたします。
「羊水検査」と「絨毛検査」どちらがいいのか
早く確実な検査結果が知りたい妊婦様にとって、妊娠10-14週頃に受検できる絨毛検査は魅力です。
しかしいま現在、基本的にはNIPT後の確定検査として推奨されているのは「羊水検査」です。
「絨毛検査」が推奨されるのは、基本的には妊婦健診において何らかの所見があった場合等※とされています。
※ほかにも、上のお子さんが何らかの重篤な遺伝子疾患を患っており、ご両親がその病気の保因者だと分かっている場合等です。
なお、絨毛検査には以下の注意点があります。
絨毛検査の注意点
1点目
絨毛検査は、およそ1%の割合で「胎盤性モザイク※(限局性胎盤モザイク)」といって、赤ちゃんではなく母体の情報を拾ってしまうことがあります。
※母体の胎盤のみに染色体異常がある状態。
その場合、改めて羊水検査が必要です。
つまり、より正確性を求める場合には羊水検査が良いでしょう。
2点目
絨毛検査は羊水検査よりも難しい手技を要する検査です。
そのため、絨毛検査をおこなう場合には経験豊富な医師を探すことが大切です。
また、絨毛検査をとりおこなっているクリニック自体があまり無く、探す手間や遠方に足を運ぶ必要性が生じるかもしれません。
妊婦様の元気な身体があってこそですので、無理のない選択をなさってください。
羊水検査にも種類があるの?
最後に、羊水検査をご検討の妊婦様にも大切なお話をいたします。
羊水検査には「Gバンド法」「FISH法」「マイクロアレイ法」「SNPマイクロアレイ」等と呼ばれる検査方法があります。
NIPTでどの項目が陽性だったかにより、いずれの方法が適しているかが異なります。
詳しくは『マイクロアレイとは?私に最適な解析方法はどれ?』をご覧ください。
基本的には医師が最適な方法を判断しますので、ご心配は要りません。
しかし、検査方法によっては結果のご理解に注意が必要です。
羊水検査の結果に関する注意点
前述の「FISH法」についてです。
FISH法は2、3日という、他の検査方法に比べ最短期間で検査結果が出ます。
速報的に利用されますが、FISH法は診断的な位置付けではなく、リスクの高さをみるスクリーニングという位置付けの検査です。
したがって、FISH法の結果だけで妊娠を継続するか否かのご判断をすることはお勧めできません。
FISH法はあくまで予備的な位置付けで、他の検査方法と組み合わせて判断される、ということをご承知おきください。
ご相談をふりかえり
羊水検査、絨毛検査、それぞれ一長一短です。
少しでも早くとお考えの妊婦様にとって、羊水検査の開始時期は遅すぎるかもしれません。
かといって絨毛検査を受けるにも対象外だったり、遠方だったり……と悩ましいところです。
いっそ確定診断を受けず、NIPTの結果だけで判断してしまおうか、という心境に行き着くのも無理はありません。
ですが、確定診断を経て「何も染色体異常はなかった」と結論づけられる妊婦様も実際にいらっしゃいます。
NIPT陽性の結果が間違っている可能性があることを踏まえると、
NIPTの結果のみでの判断は、果たして本当にこの先後悔しないだろうか──
立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。
とはいえ、妊婦様おひとり、あるいはパートナー様とおふたりで考えるにはあまりに重いテーマだと思います。
ご納得のいく選択が出来るよう、私も専門家として尽力いたします。
継続的なサポートが可能ですので、認定遺伝カウンセラーとの無料電話相談を是非ご活用ください。
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