全妊婦様に「知る権利」「選ぶ権利」を
「出生前検査、情報提供へ 全妊婦対象」
2021年3月、画期的な見出しが飛び込んできました。
国が全妊婦様を対象に、積極的に出生前検査に関する情報提供を行っていくことに乗り出した、というニュースです。
「出生前検査」とは、胎児の疾患の可能性等を調べる検査で、その種類は実に様々です。
通常の妊婦健診で行われている一般的な「超音波検査」をはじめ、他には「羊水検査」や「絨毛検査」、「母体血清マーカー検査」等があります。
中でも近年注目されているのが、従来の検査よりリスクが低く、検査精度が高い「NIPT」(新型出生前検査)です。
これまで国は、妊婦様に対し積極的に出生前検査に関する情報提供をする必要は無いとしてきました。出生前検査をする事で結果として命の選別になるのではないかという、倫理面での懸念があった為です。
しかし近年、女性たちのライフスタイルは著しく変化してきました。それに伴い、NIPT(新型出生前検査)を希望される妊婦様は増加の一途を辿っています。
並行して、NIPTを取り扱う施設も増加してきました。
NIPT(新型出生前検査)を取り扱う施設の中には、正しい情報提供やカウンセリング体制の不備等、課題を抱える無認定施設も増加してきた為、国は2021年3月、約20年ぶりの方針転換を決定しました。
今後、認定施設の審査に国が関わると厚生労働省が明らかにしたのです。
認定施設の基準を決める指針の作成にも、初めて国が関わります。
したがって、NIPT(新型出生前検査)そのものを否定するのではなく、NIPTのあり方を変えようという動向です。
妊婦様にとって何がどう変わる?
妊婦様に対して、具体的には
・市町村の母子保健窓口や産科医療機関にて、NIPT(新型出生前検査)や対象疾患に関する情報提供、リーフレットの配布
・「女性健康支援センター」における妊婦様の相談支援体制の整備
・NIPTに関心がある妊婦様への保健師や助産師らによる対面での案内
・NIPTの検査結果が陽性だった妊婦様やご家族様に向けた、専門医の対面サポート
等が今後安全策としてなされるようです。
NIPT(新型出生前検査)の受検にためらいがあった妊婦様も、NIPT(新型出生前検査)を受検する事が決してマイノリティではなく、自然な選択と思われるようになるでしょう。
ただ1点、NIPT(新型出生前検査)を国が推奨するわけではない、という点には注意が必要です。かかりつけの医師や保健師、専門家から情報を提供された場合、妊婦様によっては「NIPTの受検を勧められた」と受け取られる可能性があります。ですが、これは間違いです。
NIPT(新型出生前検査)はあくまで妊婦様ご自身が受検する、しないを選択するものです。NIPTに関する情報提供は、受検をするしないを選択する為の判断材料に過ぎません。
ちなみに英国では、助産師から妊婦様に情報提供をする際「これは受けなくてもよい検査であること」、さらに「重大な結論を迫られるかもしれないこと」が伝えられるようです。
つまり、今後国が推進していくNIPT(新型出生前検査)の「情報提供」は、すなわち「注意喚起」でもあるのです。
NIPT受検施設、どうやって選べばいい?
そして提供された情報のもと、いざNIPT(新型出生前検査)を申し込もうとインターネット検索されると、その検査施設の多さに戸惑われることでしょう。何を基準に検査施設を選択すれば良いのでしょうか。
受検施設の選択にあたり、受検場所や費用、検査精度、実績等、重視される点は妊婦様により様々かと存じます。
それらも大切にされた上でさらに、
・「意思決定に際しての適切な情報提供があること」
・「専門家による相談支援体制が整備されていること
・「万が一陽性だった際のフォローアップ(例えば心理面でのケアや、羊水検査費用の負担)があること」
これらの点も妊婦様にとって非常に大切ではないでしょうか。
なお、認定遺伝カウンセラーの役割は妊婦様やご家族様に適切な情報提供をすること、また胎児の疾患の可能性をどのように受け入れ、どう意思決定されるのかを心理的、ならびに社会的な側面からサポートすることです。
妊婦様のご心配は、その内容も度合いもお一人おひとり異なり、妊婦様の数だけ答えがあるものです。
妊婦様のお気持ちに耳を傾け、整理し導いてくれる専門家がいるというのは、難しい判断を迫られるときに大きな支えとなるはずです。
厚生労働省の方針転換も追い風となり、今後、NIPT(新型出生前検査)はますます広く認知されていくでしょう。
妊婦様へ正しい情報提供がなされ、妊婦様お一人おひとりのご選択や意思決定が納得いくものとなることを願っております。
悩まれた末の一つひとつのご選択が、より良い未来に繋がっていることを切に願っております。
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