妊婦様からのご相談
二卵性の双子を妊娠しているのですが、NIPTの結果18トリソミー陽性でした。
これは双子の両方とも陽性ということですか?それとも片方だけなのでしょうか?
もし片方だけが18トリソミーなら、2人とも諦めることも、2人とも育てることも、どちらも考えられません。
他の皆さんはどうされていますか?
また、調べたところ健康な子だけを残す減胎手術というものがあると知り、どのようなものか聞いてみたいと思いました。
ご相談をお受けして
双胎におけるトリソミーをどう理解するか
双胎妊娠であることに加えNIPTの陽性判定を受け、非常に戸惑われていらっしゃることと思います。
まず初めに、ご相談者様の状況について整理しご説明します。
⚫︎現時点で胎児が18トリソミーであるとは断定できません。
⚫︎考えられる可能性は以下の3通りです。
①どちらの胎児も陰性(=NIPTの結果は偽陽性)
②片方の胎児だけが陽性
③どちらの胎児も陽性
⚫︎NIPTの結果だけではそれ以上知る術がなく、正確な情報を知るには「羊水検査」が必要です。
⚫︎ご相談者様の場合、二卵性ということで「③どちらの胎児も陽性」である可能性は極めて低く「②片方の胎児だけが陽性」である可能性が考えられます。二卵性の胎児はそれぞれ異なった遺伝情報を持つためです。
⚫︎現時点では、「①どちらの胎児も陰性」である可能性も十分考えられます。NIPTは胎児の情報を直接拾っているわけではないからです。
⚫︎NIPTで陰性だった項目に関しては、どちらの胎児も99.99%以上の確率で陰性であることを意味するため、羊水検査で再確認する必要性はありません。
妊婦検診から見えてくることがある
まず今できることは、妊婦検診による経過観察です。
胎児の一方が本当に18トリソミーだった場合、そもそも出産まで辿りつかず妊娠初期に流産となるケースが少なくありません。また、エコーにおいて医師からむくみの強さや成長の遅さを指摘されるはずです。
反対に、エコーで何も指摘されず順調に育っているということであれば、NIPTの結果が偽陽性である可能性が高いと考えられます。
妊婦健診を継続していく中で、本当に18トリソミーなのかどうかある程度の予測ができるということです。
所見があれば羊水検査を
だたし、妊娠10週頃のエコーでは見える部分に限界があります。
そこで、妊娠11〜13週頃には妊婦健診による経過観察を継続し、所見があった場合にのみ15〜17週頃に羊水検査を受ける、というのが現状における最善の選択肢ではないかと思います。
羊水検査で18トリソミーが否定されれば、NIPTの陽性判定に関係なくご安心いただけます。
羊水検査で陽性が確定したら
羊水検査により18トリソミーが確定した場合どうなるのでしょうか。
双胎妊娠にて染色体異常が確定した場合、一般的には「二人とも産むか、二人とも諦めるか」すなわち2か0かという苦しい選択を迫られます。
上のお子さんのこと、自分たちが老いた先の子ども達のこと等、考えれば考えるほど心配は尽きません。
ご相談者様のように、病気の子を含め二人とも生み育てることは難しい、かといって二人とも諦めることもできない──。そういった心境の方にとっては「減胎手術」が辛くも希望になるのかもしれません。
減胎手術とは
「減胎手術※」とは、多胎妊娠の母親に対し胎児の数を減らす手術です。
※「多胎一部救胎手術」、「一部救胎手術」と呼ばれることもあります。
一般的な人工妊娠中絶と同じく、妊娠継続が経済面でも健康面でも母体に害を及ぼす恐れのある場合に限り認められています。
対応しているクリニックは全国に数えるほどしかありません。
減胎手術は通常妊娠11週頃におこなわれます。ですがNIPTにて陽性項目があった場合には、やはり羊水検査を受けてからが望ましいとされています。
とはいえ羊水検査を受けられる時期は妊娠15、16週以降ですから、なかには簡易検査のみを経て妊娠11週目に減退手術をおこなうクリニックもあります。
後悔のない選択をするためには、じっくりと考える時間が必要です。
したがって、減胎手術が選択肢にある場合にはお早めにクリニックへ問い合わせ、情報収集されておくことをお勧めします。
また、光があれば影もあるのが世の常です。減胎手術の多くが無事おこなわれている中で、減退手術の結果を巡って裁判がおこなわれた例もありました。
減退手術に限ったことではありませんが、物事に100%は無いと考えると、熟慮と共に覚悟も求められているのかもしれません。
さいごに
ご承知の通り、最終決定は妊婦様とパートナー様に委ねられます。タイムリミットがあるなか重大な決断を迫られるのはなかなか酷なことでしょう。
御二方にとって何が最善かを一緒に考えていけたらと思っております。継続的にフォローいたしますので何なりとご相談くださいませ。
最後に、減胎手術をおこなっている「諏訪マタニティークリニック」のお言葉を引用させていただきます。
思い悩んでいらっしゃる方にとって救いの言葉になるかもしれません。
“ 減胎された胎児は母体に吸収されて、また元のお母さんの体に戻ります。また、その何万分の幾つかは、残された胎児の体の一部となるでしょう。(略)そのようにして新しい命のバトンタッチがなされて行くものと私達は考えています。”
“ 減胎された胎児もまた望まれて妊娠された子どもです。ですから、生を受けた子どもと共に、減胎された子どもも一緒に成長しておられるものと思いつつ、全ての命に感謝し、お子さんの成長を見守ってあげて下さい。 ”
引用元:諏訪マタニティークリニック
ご感想をお聞かせください