妊婦様からのご相談
NIPTも確定検査の結果も陽性でした。
かなりショックを受けています。
何を考えてどう結論を出せばいいのか、途方に暮れています。
ご相談をお受けして
1.最優先はご自身のケア
NIPT(新型出生前検査)で陽性だった場合、羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査にて確定診断を受けるのが一般的です。
NIPTにおける陽性の結果は可能性に過ぎませんが、確定検査の結果は文字通り確定を意味します。
陽性でしたら、赤ちゃんに染色体異常があることを認めざるを得ません。
現実を突きつけられたショックは計り知れないものです。
睡眠や食事はとられていますでしょうか。
心身のエネルギーを随分と消耗されているはずです。
まずは可能な範囲でご自身をいたわってあげてください。
2.すべては「知ること」から
そして少し気持ちが落ち着いてこられたら、ご提案したいことがあります。
それは、赤ちゃんの「該当疾患に関して知ること」です。
具体的には、以下の2点です。
①お腹の赤ちゃんが生まれた場合
⚫︎どのような症状が表れる可能性があるのか
⚫︎治療の可能性
(染色体異常は基本的に治療して治せるものではありませんが、疾患によって対処療法があります。)
⚫︎支援の現状
②同じ疾患をもつ子どもの日常生活、就学、就労、結婚等について
最終的にどうするかの判断にはタイムリミットがあります。
(法律により、人工妊娠中絶は21週6日までと定められています。)
情報は無限にありますので、正確な情報を探すだけでも時間を要します。
そこで、有益な情報を厳選しましたので、こちらのページでご紹介していけたらと思います。
3.知るうえで大切なこと
なお、これらを知るうえで大切なことも2点あります。
①まず〝できるだけフラットな目線で情報をキャッチすること〟です。
つまり〝良い部分だけ、あるいは悪い部分だけに目を向けない〟ということです。
イキイキと過ごすお子様の姿や、生まれてくれて本当に良かったという場面もあるでしょう。
一方で、もう無理だと絶望し、子育てに限界を感じる場面もあることでしょう。
良い面も大変な面も総じて、いったん全ての情報を受けとられてみてください。
②そして、それらの情報は〝あくまでその子・その方の場合だと理解すること〟です。
「あなたのお腹にいる赤ちゃんの未来の姿」ではありません。
同じ疾患でも、分娩後に大きな症状がない赤ちゃんもいれば、何らかの外科的手術が必要な赤ちゃんもいます。
症状や度合いは、非常に大きな個人差があるのです。
(NIPTや確定検査でも実際に出る症状や度合いまではわかりません。)
そのため、あくまで同じ疾患をもつお子様の一例としてご覧いただけたらと思います。
4.情報集
1.《お役立ちサイトやそこから購入できるブックレットのご紹介》
⚫︎ダウン症のあるくらし
ダウン症って何 | ダウン症のあるくらし
お役立ち度★★☆☆☆
具体的な症例ではなく、「ダウン症候群(21トリソミー)」についての概要です。
ダウン症候群に関して何も知らないという方にわかりやすい入り口です。
・「ダウン症候群(21トリソミー)」のある赤ちゃん・子ども・大人
・きょうだいや親の暮らし
・「ダウン症候群」の方の仕事、結婚
⚫︎染色体起因しょうがいじの親の会 -Four Leaf Clover
FOUR LEAF CLOVER
お役立ち度★★☆☆☆
染色体異常をもつ子の親たちによる集いの場。
○「珍しいタイプの染色体起因障害」に関するブログも一覧化されています。
お役立ち度★★★★☆
(トップページから「いろいろな染色体起因しょうがい」へ)
また、
⚫︎22 HEART CLUB(22q11.2欠失症候群)
22 Heart Club
お役立ち度★★★☆☆
22番染色体異常である「22q11.2欠失症候群(ディ・ジョージ症候群)」の子どもと親御様によるサークル。
他にも
・13番染色体異常である「パトー症候群(13トリソミー)」
・男性の性染色体異常である「クラインフェルター症候群」
・その他の障害
に関する〝サポート団体〟や〝親の会〟のリンクも紹介されています。
サイト内から、オリジナルパンフレットを購入することも可能です。(1冊120円)
○「22q11.2欠失症候群~22q11.2欠失症候群の子どもとその親のために~」
お役立ち度★★★★★
同じ経験をもつ方々から、赤ちゃんの疾患を告知された親御様に向けて書かれたもの。
・告知された時の戸惑い
・疾患に関して知りたかったこと
・どう子育てし、どう子どもたちが育っているのか
・祖父母や保育園等、子育てを支援してくださる方々にどう疾患のことを伝えたらよいのか
⚫「ゆりかご」NPO法人「親子の未来を支える会」運営
https://fetalhotline.fab-support.org/yurikago/
お役立ち度★★★★☆
「ゆりかご」……NIPT前後にオンライン上で無料相談ができるサービス。匿名OK。
ご希望次第で、中絶を選択したご夫婦や、ご出産を選択し子育てされているご夫婦と対面でお話することもできるようです。
依頼される場合には、あらかじめ聞きたいことをメモにまとめておきましょう。
それぞれの経験者からお話をうかがうことは、〝どちらを選択した未来も具体的にイメージできる〟ということです。
人によってはそれが最も参考になる情報かもしれません。
また、「22q11.2症候群(22q11.2欠失症候群)」に特化したサイトも開設。
○「22q11.2症候群に関わるあなたへ」
https://peraichi.com/landing_pages/view/22q
お役立ち度★★★★☆
ブックレット(1冊220円で郵送による購入もしくはダウンロード)
○「おなかの赤ちゃんと家族のために」
お役立ち度★★★★☆
妊娠継続を考える方に向けた〝月編〟と妊娠中断を考える方に向けた〝星編〟で構成されています。
具体的な情報というよりは、心理的なケアに重点が置かれています。
どのようなお考えも尊重してくれる言葉が並んでいます。
この選択でよいのか不安という方には一読の価値あり。
2.《お役立ち書籍のご紹介》
⚫︎ 「〜毎日の生活と支援、こうなってる〜 ダウン症児の母親です!」
たちばなかおる著 講談社 2014年発行
https://amzn.to/3xd9MT4
お役立ち度★★★★☆
・子どもが「ダウン症候群(21トリソミー)」だと告知されたとき
・実際に受けてきた支援の一覧
(福祉手当の受給や、緊急時に預けられる場所を利用できる受給者証、また学童への送迎をしてもらえる福祉支援等)
・「ダウン症候群」の子どもとの生活、保育園、学校について
・きょうだい児(障害をもつきょうだいがいる子ども)について
・将来的な就労や、住むところについて
・専門家とのQ&A
本が苦手な方でも読みやすい構成です。
イラストも多く、見開き1ページで1つのテーマが完結しています。
「何が聞きたいかわからないけれど、漠然とダウン症候群という障害に不安を感じる」
という方にぴったりで、モヤモヤした気持ちが晴れていく、というレビューも見受けられます。
プラス面もマイナス面も率直に書かれているため、冷静に最終選択をする大きな手助けとなってくれそうです。
⚫︎「21番目のやさしさに」
岩本 綾著 かもがわ出版 2008年発行
https://amzn.to/3mBA93n
お役立ち度★★★★☆
「ダウン症候群」当事者によって幼児期〜大学卒業までについて書かれた貴重な本。
・自分の障害を親にどう受け止めてもらいたいか
・障害をもって生まれた子どもは幸せに生きられるのか
ダウン症候群の子どもを生み育てる場合、お子様本人は日々の物事をどのように感じ取っているのか、あくまで一例ですがハッとさせられる気付きがあります。
⚫「障害のある子が将来にわたって受けられるサービスのすべて」
渡部伸監修 自由国民社出版
https://amzn.to/3mMCdph
お役立ち度★★★★★
・障害のある子をサポートするサービス
・小学校選びをどうするか
・大学に進学する障害者への支援
・就労相談や支援
・税金の特例や各種割引等のサービス
・親なきあとをどうするか
障害児の子育ては不安だと感じる理由の一部に、経済的な理由があるかと思います。
仕事は続けられるのか、子どものサポートにはどのようなものがあるのか、経済的支援にはどのようなものがあるのか具体的に知ることができる良書です。
ご相談をふりかえり 〜ご経験者の声と共に〜
重く難しい選択に苦慮されていることと思います。
まずは知ることからというお話をさせていただきました。
経験者のお話を聞くことも、大事な「知ること」のひとつです。
同じ経験をされた方々は、実際どのように考え最終選択をなさったのでしょうか。
御三方のインタビューをご紹介します。
※ただし、センシティブな内容を含みます。
知りたくない方や、過去に流産や死産、中絶のご経験がある方にはお勧めできかねます。
ケース①
《赤ちゃんのダウン症候群が確定し、育てる選択をされたお父様》
「妻のお腹にいる子どもがダウン症だと判明し、ひどく落ち込みました。
ダウン症の子は周りに危害をくわえるんじゃないか。※
生まれても本人がつらいんじゃないか。
ダウン症のことをよく知らなかったので、そういう心配ばかりでした。
妻とも話し合い随分悩みましたが、最終的には育てようとなりました。
どんな子でも受け入れる覚悟ができた、というわけではありません。
諦める方向で考えているときにふと思ったんです。
動いている赤ちゃんの心臓を親の意思で止めてしまうってことなんだよなって。
〝自分たちで中絶を選ぶことはできない〟というのが答えでした。
育てていく覚悟というより、実際にはそういう気持ちでした。」
※ダウン症候群の子どもが人に危害をくわえるというのは誤解です。
特性による課題がある場合、早期からの療育が有効とされています。
また、ダウン症候群の方へおこなったアンケートでは、8割の方が「毎日の生活に幸福感を持っている」という回答でした。
感受性の豊かな方が多いのもダウン症候群の特性のひとつです。
ケース②
《赤ちゃんのダウン症候群が確定し、妊娠の中断を選択されたお母様》
「羊水検査の結果が出てから中絶できるリミットまで、わずか数日でした。
すぐに決断しないといけない状況は、本当に苦しかったです。
身近にダウン症の子がいなかったので育てていくイメージが持てませんでした。
いざ手術を終えて目が覚めると、さっきまでお腹にいた赤ちゃんは本当にもういないんだと思ったとき、堰を切ったように涙があふれました。
主人も悲しんでいましたが、自分のお腹に命を宿していたわけではない主人とは、どこか悲しみに温度差がありました。
自分の意思で決めたこととはいえ、自責の念でおかしくなりそうです。
心のモヤは一生残るんじゃないかと思います。
それでも、上の子たちのことや、親がこの世を去ってからのことを考えると、この選択は仕方なかったと思っています。
誰かが育ててくれるわけではないですし、生まれたら幸せが約束されているというわけでもありません。これでよかったんだと言い聞かせています。」
出産前後に赤ちゃんを亡くされたご両親には「グリーフケア(悲嘆の援助)」が必要です。
ご自身の意思による中絶はどうしても非難されがちですが、初めから中絶したいと考える方はそもそも出生前検査を受検されません。
誰しもきっと本当は産みたかったはずです。
赤ちゃんを失って20年経っても、まだ昨日のことのように苦しいとおっしゃる方もいます。
動画リンク:流産・死産でお子様を亡くされた方へ【東京都助産師会】【グリーフ】
↑こちらは赤ちゃんとお別れした方々に向けられたメッセージ動画です。
心のわだかまりを取り除いてくれるきっかけが見つかるかもしれません。
また、サポートグループもあります。
⚫︎「天使保護者ルカの会」 https://tenshi-rukanokai.jpn.org/
⚫︎「WAIS(お空の天使パパ&ママの会)」 http://www.waiskt.org/
行き場のない悲しみにひとり苦しまれぬよう、このような場所もあることをお知りいただけたらと思います。
ケース③
《妊娠の中断を決意していたが、育てたいという気持ちに変わったお二人》
「10年にもわたる不妊治療や度重なる流産を経て、やっと今回安定期までこられました。
検診でも順調といわれていたので、NIPTでダウン症の項目が陽性と出たときは信じることができませんでした。
その後の検査でも陽性で、やはりダウン症なのかとひどくショックを受けました。
本当に目の前が真っ暗になり、意識が遠のくようでした。
もし陽性だったらと想像することと、実際にそうなることは、次元が全く違っていました。
漠然と、障害がある子どもを育てるのは無理だな、と私も主人も思っていました。
結論を出す少し前に、なんとなく気になっていたNPO法人を通じて、中絶経験がある方にお会いしました。
そしてまた後日、今度はダウン症の子を育てる方にもお会いしました。
本当はそのときすでに中絶を決意しており、手術の予約も入れていました。
でもそこで思いがガラッと変わったのです。
産めないと思っていたのは、ダウン症について先入観があったからで、それは間違いだったとわかりました。
障害児を育てるのは苦労の連続で、家庭の雰囲気が暗くなるような気がしてました。
でも実際には学校の送り迎え等の福祉サポートもあるようで、私が付きっきりでいる必要もないことがわかりました。
色々考えてしまいますが、産んでしまえばそこから子どもなりの生活が始まること、楽しいと感じる子どもの気持ちがあること。
子どもが楽しく暮らしていれば、それが楽しい家庭だということにも気付かされました。
主人の両親は最後まで反対していましたが、私の母は応援してくれました。
最終的には、主人と私の気持ちで決めたのですが、これでよかったと思っています。
安心したくて受けたはずのNIPTで赤ちゃんのダウン症がわかってしまい、当初は受けなければよかったと感じていました。
でも、知らずに産んでいたらきっとパニックだったと思います。
結果的には心構えや万全な医療体制で出産できたので、NIPTを受けたことは後悔していません。
子どもはとても可愛いです。仕事もどうにか続けられています。
当時は食事もできないほど悩みましたが、なんとかなるものだと思いました。」
御三方のお話をご紹介させていただきました。
これらのお話からもわかるように、多くの方が0か100かでスッキリと結論を出せているわけではないのです。
これで心は決まった、と思っても心は揺れ動くものです。
時間が許す限り、十分すぎるほど悩まれてよいのです。
どちらの選択も想定してみて、未来に後悔が残りにくいのはどちらでしょうか。
そのあたりを探っていくしかないのかもしれません。
正解はなく、大切なのは「自分の意思で決められたかどうか」に尽きます。
受検者様の意思に反してどなたかが決めたこと、誘導したことであってはなりません。
周りがとやかく言おうとも、赤ちゃんのご両親であるお二人のお考えを大切にしてよいのです。
妊婦様、パートナー様のことをいつも応援しております。
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