受検者様からのご相談
NIPT(新型出生前検査)で結果が陽性だった場合のことが想像できず、結果を受け止められる自信がありません。
陽性だったら羊水検査(確定検査)に進むようですが、羊水検査が原因で流産したらと考えると怖いです。
陽性が確定したら妊娠を中断する可能性もあり、赤ちゃんに申し訳ない気持ちです。
ご相談をお受けして
〝NIPT(新型出生前検査)で赤ちゃんの健康を確認し、安心した妊娠生活を送りたい〟
――――これは受検者様全員に共通する思いです。
つまり、ほとんどの妊婦様が「陰性」を前提に受検されているようです。
それでも検査結果が出るまでの期間というのは、「もし陽性だったら」という不安がよぎります。
(受検から結果までは6〜10日ほどかかります。)
それだけ赤ちゃんのことを大切に想っている証だと思います。
ここからは
・万が一陽性だった場合の解釈の仕方
・結果待ちの期間だからこそできること
を中心にお話いたします。
事前に知り備えておくことで、不安の一部は解消されるでしょう。
また、万が一の際にはそれが大きな支えとなるはずです。
結果待ちの今だからこそできる備えを一緒に考えていきましょう。
1.陽性という結果の受け止め方
NIPTで万が一陽性の結果だった場合、どう解釈すればよいのでしょうか。
結論から申しますと、NIPTの陽性とは胎児が染色体異常をもっている〝可能性が高い〟という意味です。
実際には陰性(=偽陽性)の可能性もあります。
なぜなら、NIPT(新型出生前検査)は「非確定検査」だからです。
文字通り、結果を確定できるわけではありません。
それでもNIPTの偽陽性は0.1%で、正確な結果である可能性が99.9%と思われる方も割と多くいらっしゃいます。
実はこれは間違いです。
「NIPTは検査精度99.9%」と謳われることが多いため誤解されやすいのですが、これは〝陰性だった場合の的中率〟です。
つまり、陰性であればその結果は99.9%間違いなく、ご安心いただけるということです。
一方で〝陽性だった場合の的中率〟はというと、何番染色体が陽性か、そして受検者様がおいくつか、といった条件によって異なります。
そのため一概にはお伝えし難いのですが、発生頻度が比較的高い染色体異常のなかには、偽陽性の発生率が40%というものもあります。※
※発生頻度が高いとされる染色体異常に、「ダウン症候群(21トリソミー)」「エドワーズ症候群(18トリソミー)」「パトー症候群(13トリソミー)」があり、これらは三大トリソミーとも呼ばれます。
このうち13トリソミーにおける偽陽性の発生率が40%と知られています。
詳しくは『NIPT陽性。赤ちゃんに障害があるということ?』をご参照ください。
したがって、NIPTの結果が陽性と出た場合には、羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査によって確定診断を受けることが非常に大切です。
2.検査結果を受け取るまでの間にできること
NIPTにおける陽性の結果は、あくまで可能性に過ぎないとお伝えしました。
とはいえ、陽性という結果には多大なるショックを受けるものです。
陽性結果を受け取られた方の多くが、「陽性かもしれないと想像することと、実際に自分が陽性の結果を受け取ることは、全く別物だった」と口を揃えます。
頭が真っ白になるでしょうし、何も手につかなくなるかもしれません。
しかし、その間も妊娠週数は進んでゆき、胎児は成長を続けます。
大切なのは、パートナー様と共にNIPTの検査結果が出るまでにできる備えをしておくということです。
具体的には以下の2点です。
①もし陽性だった場合「どのようなスケジュール感でどう行動したらよいのか」を把握しておく
②陽性だった場合に受検する「確定検査の受検施設」をあらかじめ検討しておく
これらが必要な理由もあわせてお話いたします。
①については、
妊娠の中断も視野にある妊婦様が、確定検査の受検や結果待ちの間に、期限を過ぎてしまうケースがあるためです。※
※人工妊娠中絶手術は、法律により妊娠21週6日まで(22週未満まで)と定められています。
②については、
・羊水検査・絨毛検査ともに受検できる施設があまり多くないこと
・受検にあたっての条件(NIPTを認定施設で受検していること等)を設けている施設もあり、なかなか受け入れ先が決まらないケースもあること
・予約が取りづらく、希望日より先の予約になってしまうケースもあること
(例えば最短で予約できる日がひと月後だとすると、それだけ妊娠週数も経過してしまいます。)
・事前にリスクの詳しい案内や同意が必要なこと
・受検から結果通知までの間も3〜4週間かかる場合があること
(施設や解析法により異なります。)
等の理由が挙げられます。
(なお、NIPTのご受検が妊娠15週目以降の方は、念の為NIPTの結果が出るまでに確定検査のご予約をされておくことをお勧めします。)
具体的なスケジュールの把握
NIPTから確定検査までのスケジュールを把握できる、書き込み式のカレンダーをご用意しました。
⇒コチラから印刷してご利用ください
検査機関や確定検査の解析方法によって日数に幅はありますが、だいたいのイメージをお持ちいただけましたでしょうか。
妊婦様の中には「陽性の結果が出てから調べます」と仰る方もいらっしゃいます。しかし実際には、混乱している中で落ち着いて調べられる余裕はそうありません。
「次はいつ何をする」
「いつまでに答えを出す必要があり、それまでが考えられる期間」
と把握しておくことで、それがいざというときの支えになってくれることでしょう。
3.確定検査は「羊水検査」と「絨毛検査」どちらがよいのか
確定検査には、「羊水検査」と「絨毛(じゅうもう)検査」があり、どちらを受検いただいても構いません。
妊婦様にとっては、受検時期が最も大きな違いだと思われます。
「絨毛検査」は、NIPTと同じく妊娠10週目から受検可能です。
一方の「羊水検査」は、妊娠15週目から可能な検査(確実な16週目以降が一般的)ですので、それまで待つ必要があります。
羊水は妊娠週数に伴って増えるので、羊水量が十分に増えてからの検査となるためです。
ただし、国内での絨毛検査の普及率はまだまだ低く、国内における確定検査の99%が羊水検査といわれています。
いずれの検査も、その時期の自然流産と比較した流産リスクは0.1%ほどです。※
おそらく一般的に知られているよりもずっと低いでしょう。
とはいえ、0%ではない以上、ご注意が必要です。
具体的には、実績ある検査施設・医師の元で確定検査をおこなうということです。
医師の手技によってリスクが異なるといわれているためです。
※羊水検査と絨毛検査の流産リスクにつきましては、『NIPT陽性。羊水検査・絨毛検査、どちらを選べばよい?』にて詳しく解説しておりますのでご覧ください。
ご相談をふりかえり
NIPT(新型出生前検査)の受検後から検査結果が出るまでの間は、特に不安に駆られる期間です。
まずはNIPTの検査結果が出るまでの期間だからこそできる備えをしておきましょう。
NIPTの結果が陰性であることを願っておりますが、万が一陽性だったとしても偽陽性の可能性も否めません。
検査結果が陽性だった場合には、それが本当に正しいのか、確定検査にて確認しましょう。
確定検査の結果も陽性でしたら、お腹の赤ちゃんに染色体異常があるということです。
お辛いでしょうし簡単なことではありませんので、非常に悩まれることと思います。
その際には、お一人もしくはパートナー様とお二人だけで悩まれないよう、願っています。
重要な選択をする際には、専門家による正しい情報が必要不可欠です。
わからないこと、不安なことは全て書き出し、病院で納得いくまで遺伝カウンセリングをお受けください。
また、当院の認定遺伝カウンセラーによる無料電話相談をご活用ください。
お二人の考えを尊重し、共に考えていけたらと思います。
どのような未来でも、十分に悩み自己決定したことはやがて納得できるものです。
妊婦様、パートナー様のことをいつも応援しております。
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