NIPTを受けるのに年齢制限はある?

コラム

妊娠した場合にはいろいろな検査をして胎児の状態を調べることなどができるようになっていますが、中には検査対象が制限されている場合もあります。では、NIPTには年齢制限が設けられているのでしょうか、それとも全くそのようなことを気にすることなく検査を受けることができるようになっているのでしょうか。

そもそもNIPTとは一体どういうものか

NIPTとは、新型出生前診断のことで、妊婦の血液を利用してPCR検査をすることで、胎児にダウン症などの染色体異常がないかどうかを調べることができるものです。日本国内では2013年から導入されており、採血のみで検査をすることができるのが高く評価されています。実際にこの診断によって、胎児の染色体異常の約3分の2程度の染色体異常を調べることができるようになっており、異常があるかどうかの可能性があるものとして利用されています。この検査のときにもし結果が陽性だった場合は確定診断のために羊水検査をおこなうといのが一般的な流れです。検査自体は妊娠10週目から受けることができるようになっており、検査結果は病院によっても違いますが、大体1週間から2週間で知ることができます。

検査に年齢制限はあるのかどうか

一般的に、NIPT自体は誰でも検査を受けることができるようになっているわけではなく、実はその検査を受けるためには年齢の条件を満たしていなければなりません。現在設定されているのは35歳以上ということになっており、それ未満の年齢の人はこの検査は受けることができないことになっています。また、現時点では34歳の人でも、出産予定日に35歳以上になっている人の場合も、この検査を受けることができると定められています。つまり、NIPTは現時点で、もしくは出産予定日に35歳になっている人が対象となっている検査で、それよりも低い年齢の人は受けることができません。また年齢制限だけが設けられている検査というわけではなく、母体血清マーカー検査や胎児超音波検査で胎児になんらかの異状があることを指摘された人も対象です。また、2回目以降の妊娠で、以前染色体疾患を持つ子を妊娠、もしくは出産したことがある人なども、検査を受ける人の条件となっているので、自分がその対象になっているかを調べるのも良いでしょう。ただし、前述の年齢制限はあくまでも日本産婦人科学会の認可を受けた施設に限られた条件であるため、無認可施設においては35歳未満の方でも受診可能です。

なんで年齢制限が設けられているのだろうか

血液検査をするだけなので、NIPT自体はほとんど母体に負担をかけることがないため、年齢制限などは設ける必要がないと感じる人もいるかもしれません。ではなぜ年齢制限が設けられているかというと、そこにはダウン症の発生率と母体の年齢が大きく関係しているというのが大きな理由です。実は、ダウン症というのは母体の年齢が上がれば上がるほどそのリスクが増し、たとえば30歳で妊娠している場合は0.16%程度なのですが、これが35歳になると0.4%、さらに40歳になると1.47%まで上昇します。もちろんこの数字だけで見るとそれほど大きな違いはない、たかだか1%程度の違いではないかと感じる人もいるでしょう。しかし、もうすこし深く考えてみると、年齢の上昇によってリスクが一気に高まっていくというのがわかっていただけるはずです。

たとえば30歳で妊娠した場合は、その0.16%、つまり626分の1程度の確率でダウン症の子を妊娠する可能性があるということになります。しかし40歳の場合は1.47%と低い数字ですが、実は68分の1の確率でダウン症の子を妊娠する可能性があるということになるのです。このように、1%強の違いに過ぎませんが、実際に見てみると、このように年齢が上がるにつれて一気にリスクが増し、その境界線となっているのが35歳あたりとわかっています。そのため、それよりも低年齢の人ではなく、一つの目安として35歳以上の人、という条件がNIPTには設けられているのです。

またもう一つの理由が、実はこの検査をおこなった場合、偽陽性の反応が出てしまう可能性もあるというのが大きく関係しています。偽陽性とは、本当は陰性なのですが、誤って陽性の反応が出てしまうことで、これは検査の感度を高くしようとすることによって起こりやすくなります。ただ偽陽性自体はNIPTで多く発生しているものではなく、いろいろな検査で起きているものであり、決して珍しいものというわけではありません。だから、医師は検査だけで病気を判断するのではなく、問診をしたり診察をしたり、観察をしたりといろいろな方法でアプローチし、総合的認定判断して診断結果を下しています。

NIPTに関しては、研究の結果35歳未満でこの検査をおこなった場合、偽陽性となる確率が35歳以上と比べると高いということがわかっています。そのため、できるだけ正しく検査をして、正しい結果を出すために、偽陽性が出にくい35歳というのを一つの目安として、その年齢以上の人が検査を受けることができるということにしています。

もちろん、この検査自体は非確定検査なので、この検査でもし陽性という結果が出たとしても、そのまま胎児がダウン症だと診断されるわけではありません。この検査のあとに羊水検査と絨毛検査などをおこない、本当に異常があるのかどうかをしっかりと調べるようになっているからです。しかし母体の状態がどのようになっていたとしても、検査を受けることは負担とならないわけではないので、できるだけ不必要な検査は受けないように配慮することも必要と言えます。できるだけ低リスクで妊娠・出産をするためにも、この検査では年齢制限を設け、リスクがある人が基本的に受けることができる検査と位置付けているのです。

ただ、年齢制限はたしかに設けられていますが、35歳未満であればダウン症のリスクが全くないかと言ったら決してそういうわけではありません。従って、NIPTではたしかに年齢制限を設けていますが、染色体異常の胎児を以前妊娠出産したことがある人などは、その年齢を満たしていなくても検査を受けることができるようなっています。つまり、年齢制限自体は不必要な検査を防ぐ目的でも設けられているものですが、あくまでも目安の一つに過ぎません。だから、この検査はリスクがあると病院で判断された人は誰でも受けることができるようになっており、35歳以上であれば本人の希望で受けることができるということになります。しかし、35歳以上になったら絶対に受けなければならない検査というわけでもなく、受けるかどうか迷っているときはしっかりと病院でまずは相談してから決めると良いでしょう。

NIPTは新型出生前診断のことで、生まれる前に胎児に染色体異常の可能性がないかどうかを調べることができる検査のことです。検査は誰でも受けることができるわけではなく、年齢制限も設けられており、現時点で35歳、もしくは出産予定日に35歳になっている人が対象です。35歳になるとそれまでよりもダウン症のリスクが増すことや、35歳以上になるとこの検査での偽陽性の確立が下がって、検査の精度がアップすることが関係しています。ただ年齢制限はたしかに設けられていますが、それ以外にもリスクがあると判断された場合には、この検査を受けることができるようになっています。また、35歳以上で妊娠している場合は絶対にこの検査を受けなければならないわけではなく、受けるかどうかは本人の意思ももちろん尊重されます。