出生前診断の検査方法とは|具体的にどんなことをするのか

コラム

出生前診断とは正式には「無侵襲的出生前遺伝子学的検査」あるいは「母体血細胞フリー胎児遺伝子検査」と言います。 出生前診断を広く言えば、赤ちゃんが生まれる前に胎児に異常がないかや、どんな様子なのかを調べることです。妊婦検診の内容の中には、エコー(超音波)で胎児の様子を見る検査も入っていますが、広い意味ではエコーも出生前診断と言っても良いでしょう。

トリプルマーカーテストやクワトロマーカーテスト

主な出生前診断には、トリプルマーカーテストやクワトロマーカーテストがあります。これらの検査方法は、14~18週の時に採血をした血液の成分を調べるだけです。胎児にも影響はないし、妊婦さんも採血するだけの検査内容なので、一瞬チクッとするだけで済みます。しかし、手軽にできる反面、羊水検査に比べると正確性が劣ってしまうという点がデメリットです。この検査でわかるのは、46本の染色体のうち、18番と21番の2種類と開放性神経管奇形の異常のみになります。つまり、星の数ほどある病気の中から、これらの3つの疾患のみを出生前に調べることが可能だということです。21番の染色体が2本ではなく3本になっている状態が、いわゆる21番トリソミーと呼ばれるもので、ダウン症です。採血をして検査の結果が出るまでには1週間~2週間ほどかかります。病院によっては、受診者が多いために検査の結果は1か月先の来月の妊婦検診の時に、という所もあります。この検査は、保険適応ではないのでおよそ20万円ほどの検査代が必要です。この検査で陽性という結果が出た場合は、さらに詳しい羊水検査を受けないと診断が確定できません。

羊水検査は多少のリスクも伴います

トリプルマーカーテストやクワトロマーカーテストの結果が陽性だった場合は、妊娠15~18週に羊水を採取して、その中に含まれる染色体などを調べて、胎児の染色体異常や代謝疾患を調べます。日本国内では、1年間に1万件ほどが実施されてるのが現状です。しかし、200件に1回~300件に1回の割合で、流産を引きおこすというリスクがあります。また、胎児に異常が見つかった場合はどのようにするのか考える期間が、少ししかないという問題点を抱えています。結果が出るまでに1~2週間かかりますが、妊娠中絶を受けることが出来るのは21週と6日までだからです。20週で検査結果が分かった場合は、2週間足らずしか考える時間がありません。日曜日くらいしか、夫婦でゆっくり話ができる日がないというご夫婦も多いことでしょう。たったの2回や4~5回程度の話し合いでは、あまりにも短いのではないでしょうか。関西の某病院では、年間400人が出生前診断としてトリプルマーカーテストやクワトロマーカーテストを受けています。そのうち6人がダウン症と診断されましたが、5人が中絶して1人が出産したという結果になっています。検査代は、医療機関によって多少違います。8万~15万円くらいだと思っておくと良いでしょう。

絨毛検査は羊水検査よりも早い時期に可能です

妊娠9~11週の時期に、絨毛と言う胎盤の一部を針で採取して、染色体異常が有るか無いかを調べる検査方法です。羊水検査よりも早い時期に検査が出来るため、万が一異常が見つかった場合に時間をかけてその後どうするかを決めることが出来ます。しかし、流産する確率は羊水検査よりも高くなるので、これが大きなデメリットです。お腹に針を刺しますが、10秒ほどで済みます。20分ほど休んでから検査室を出ることが多いです。抗菌薬を数日分処方されるので、きちんと服用しましょう。中には、「障害が有っても無くても産む」と言う人は出生前検査は受けないだろう、出生前検査で陽性なら中絶したいと思っている人が出生前検査を受けているケースが多いから、少々早く検査を受けることが出来るということは、それほどのメリットではないと言う専門家もいます。そのため、流産のデメリットを少しでも軽くすることの方が価値があるという考えから、絨毛検査を施行することは減ってきて、羊水検査が増えている傾向があります。絨毛検査も結果はすぐには出ず、1~2週間後という医療機関が多いです。検査を受けてから結果が出るまでの期間がストレスになるという声も多いので、これもデメリットの1つだとも言えるでしょう。絨毛検査も、やはり10万~20万円ほどかかります。

エコーも出生前診断の1つと言えます

赤ちゃんが生まれてくる前に、異常がないかを調べるのが出生前診断であるならば、エコー(超音波検査)もその一つだと言えます。妊婦検診の時に超音波でお腹の中を見ますが、「先生、男の子ですか?女の子ですか?」などと、いきなり尋ねるのはNGです。婦人科医はまず最初に、命に関わるような大事な部分から見て行きます。心臓の弁はちゃんとあるか、その弁は正常に開閉しているか、内臓の発達はどうだろうかといった生命にかかわる部分から見て行き、その後手足の指の数は5本ずつか、顔貌はどうだろうかなどを見て、一番最後が男の子か女の子かです。一昔前は、男の子か女の子かさえも教えてもらえませんでした。エコーの画質が今ほど良くないために、正確な判断をすることが難しかったからです。そのため、準備するベビー服は、男の子でも女の子でもOKの黄色が多かったです。エコーでも、ダウン症の特徴をキャッチすることができるケースもあります。ダウン症児に特有の顔貌などが見て取れるケースもあるからです。また、心臓の異常からダウン症を疑うこともあります。

受けるか受けないかは夫婦で話し合いましょう

イギリスでは2004年からすべての妊婦さんが出生前診断を受けることとなっています。しかし今の日本では任意です。出生前診断は、以前は2013年ごろから臨床研究の1つとして行われていました。それが2018年の3月から、一般診療とすることが正式に決定したのです。しかし、保険診療ではなく自由診療なので、上記のように高額な費用が必要になります。判明するのは3つの染色体異常のみだ、ということもしっかりと認識しておきたいものです。出生前診断で異常がないということが、健康な赤ちゃんが産まれてくる保証にはなりません。脅かすわけではありませんが、3つの病気は大丈夫でも、この世には星の数ほどの病気があるのだということを考えると、納得して頂けるでしょう。出来れば、妊娠したいと思った時点で、遺伝カウンセラーに相談してみるというのも賢い方法の1つです。妊活の1つとして、妊娠する前から出生前診断をどうするかを考えることができるとベターです。 妊娠中に考え方が変わる可能性もあるかと思いますが、考えが変わればその都度夫婦で話し合えば良いのです。中絶できるタイムリミットが過ぎたから産んだ子ではなく、十分に納得して結論を出したいものです。