NIPTではどんな仕組みで胎児の状態を調べているの?

コラム

新型出生前診断と日本語では呼ばれているNIPTの検査はまだお腹の中にいる胎児のうちに先天的な病気や障害を持ってしまっているのかどうかを判断するのに用いられる方法です。まだ生まれてもいないのに何か病気や障害を持っているのかどうかを見極められるのはなぜなのかと疑問に思う人も多いでしょう。生まれてきた後に診察をして病気だったとわかるのであれば納得できても、まだ生まれる前に検査をして出てきた結果が本当に信用できるのかと思うかもしれません。出生前診断の中でも新しい方法なので、どのような仕組みで胎児の状態を調べているのかを基本的なところから確認していきましょう。

NIPTは基本的には遺伝子検査

NIPTが生まれる前の胎児の検査をすることができるのは、基本的には遺伝子検査になっているからです。胎児の遺伝子を少し取ってきて、その遺伝子がどのような状態になっているかを確認することによって先天的な病気や障害を持っているかを判断する仕組みになっています。基本的には遺伝子は親から子へと引き継がれていくものですが、子どもの持つ遺伝子は父親と母親の遺伝子をランダムに組み合わせることによって作り上げられます。ランダムとはいっても人が持つべき一つ一つの遺伝子はほとんどが保持される形になっていて、それぞれの遺伝子について父親由来のものと母親由来のものとが組み合わさってできていきます。そのため、同じ父親と母親から生まれた子どもであっても、組み合わせのパターンが違うので全く異なる遺伝子のパターンを持った子どもになるのです。ただ、組み合わせが違うだけで同じ父親と母親の遺伝子から構成されているので親は子に似るようになりやすいということが知られています。このような遺伝子の組み合わせが決まるのは父親の精子と母親の卵子がくっついて受精卵を形成した段階で、たった一つの細胞から新しい個体が生まれてくることになります。つまり、この遺伝子の情報がもとになって胎児の身体や組織が作られていくことになるので、遺伝子の状態がどんな胎児になるかをほぼ決めているということになるのです。そのため、遺伝子を検査することによっていろいろな情報を得ることが可能だということがわかり、出生前診断にも用いられるようになりました。母親の胎内で育っている胎児の遺伝子を少し取ってくることができれば、遺伝子情報を読み取ることができる技術が生まれてきたこともこのような診断をできるようにした理由です。ほんのわずかな量の遺伝子であってもPCR法と呼ばれる増幅技術を用いることによって増やすことができます。そして、その遺伝子を作り上げているDNAの配列を読む技術も進んでいて丁寧に一つずつ確認していくことができるようになっています。このような技術が生まれてきたことにより遺伝子検査が可能になり、出生前診断をするための方法論も開発されてきたのが現状です。実際には妊婦が採決をするだけで、胎児の遺伝子と妊婦の遺伝子をまとめて検査するという形で簡単に胎児の遺伝子の状態を把握できるようになっています。胎児の細胞や血液だけを採取するのはとても難しいことですが、妊婦の血液からでも診断可能になったのもNIPTが実際に使用できるようになった理由と言えます。

なぜ遺伝子診断なら判断できるのか

遺伝子診断なら出生前でも診断できるのがなぜなのかとまだ疑問に思う人もいるでしょう。結論から言ってしまえば、この検査によって診断しているのは遺伝的な疾患を対象としているからです。人が病気になってしまったり、障害を持ってしまったりする原因として遺伝子が問題になっているケースがあることが知られています。遺伝病と呼ばれているものが代表例で、親から子へと伝えられていて家系的に誰もが同じ病気や障害を持ってしまうということも少なくありません。ただ、遺伝病も必ずしも全世代で発症してしまうというわけではなく、ある子どもは全く病気にならなかったというケースもあります。これは人の場合には遺伝子が二つの組み合わせでできているからで、組み合わせ次第で発症したり発症しなかったりするのが理由です。例えば、Aとaという二通りの遺伝子が知られていて、人によってAA、Aa、aaという組み合わせの可能性があったとしましょう。この場合にAが含まれていれば発症しないけれど、Aが含まれていない場合には発症するという遺伝病がよくあります。遺伝によって親から子へと遺伝子が継がれていったときにたまたまaaとなってしまった子だけが病気になってしまうのです。遺伝子診断ではこのような形で特定の遺伝子がどのようになっているかを調べる仕組みになっています。二つの組み合わせがどうなっているかがわかると、生まれてきたらこの病気になっているはずだ、このような障害を持っているだろうと考えることができるのです。あるいは遺伝子の組み合わせによっては生まれてきた段階では大丈夫でも、育っていくうちにこの病気やこの障害が発生するリスクが高いといったことも示唆することがあります。ただ遺伝子を解読するための技術開発が進められてきて実用化されただけでなく、一つ一つの遺伝子と病気や障害との関連性が研究されてきたことにより、胎児の時点で何を調べておけばどんな病気や障害になっているかが対応付けられるようになっているのがNIPTによる診断が可能になった理由です。

NIPTではトリソミーを確認している

このような説明の中で特に重要なのが遺伝子と病気や障害が一対一の関係で対応付けられてきたという事実です。特に深刻な病気や障害につながる異常としてトリソミーが知られていて、実際にはNIPTでは今まで説明してきたような細かな検査をしているのではなく、トリソミーを調べているのが特徴です。トリソミーとは遺伝子そのもののDNA配列の異常ではなく、DNAによって作り上げられている染色体そのものの異常として知られているもので、通常は二つの染色体があるのに対し、トリソミーの場合には三つの染色体があるという形になっています。このようなトリソミーとの関連性が指摘されている病気は多く、特に遺伝的によく起こるものとして13番目、18番目、21番目の染色体についてトリソミーかどうかを検査しているのがNIPTの特徴です。ただ、それ以外の染色体についてもトリソミーになって疾患を引き起こすこともあるため、希望すれば全ゲノムの検査もしてもらうことができます。その分だけ費用負担が大きくなるのは確かなので、受けるかどうかは親がよく考えて決断することが必要です。

NIPTは遺伝子検査の技術の一つとして知られていて、遺伝子の異常と病気や障害の一対一での関連付けがおこなわれてきたことや、遺伝子に関連する技術開発が進められてきたことにより実現されたものです。胎児の遺伝子の情報を調べて先天的な病気や障害を持っているかを診断するというのが基本的な仕組みになっています。実際には遺伝子を構成するDNAの配列を調べているのではなく、通常は二つの染色体があるのに対して三つの染色体があるトリソミーと呼ばれる状態を調べているのが特徴です。特に疾患との関連性が深いことが明らかになっている13番目、18番目、21番目のトリソミーを検査によって調べて病気や障害を持っている胎児かどうかを診断しています。希望をすれば全ゲノムについて検査をしてもらうことも可能ですが、費用は余計にかかることになるのでよく考えて決めるようにしましょう。