NIPTで分かるエドワーズ症候群について解説

コラム

NIPTを受けることによって胎児が生まれる前に病気や障害があるかどうかを診断することができます。新型出生前診断で調べられるのはダウン症候群、エドワーズ症候群、パトー症候群の三種類です。どれも特徴的な症状がある染色体異常による病気として知られていますが、どのようなものなのか詳しく理解できているでしょうか。この記事ではこの三つの中で二番目に頻度が高いと言われているエドワーズ症候群について解説します。

エドワーズ症候群とはどのような染色体異常か

エドワーズ症候群はトリソミー18あるいは18トリソミーとも呼ばれる先天性症候群の一つです。この症候群を報告したイギリスの医師の名前にちなんで1960年に名付けられました。この症候群は医療現場ではトリソミー18と呼ばれているのが一般的で、染色体異常の状況と名称が一致することから分かりやすいと判断されています。トリソミーとは染色体異常の一種で、たとえ両親ともに健康体でトリソミーを持っていなかったとしても子供はトリソミーになってしまうリスクがあることが知られています。人は23対の染色体を持っていて、それぞれが二本のDNA鎖によって形成されているのが正常な状態です。しかし、DNA鎖が三本になってしまうことがあり、その状態になった染色体のことをトリソミーと呼んでいます。また、染色体には1番から順番に番号が振られていて、この症候群の場合には18番目の染色体がトリソミーになってしまっているのでトリソミー18と言われているのです。この他の染色体異常による先天性症候群の場合にもトリソミーが原因になっている場合があり、ダウン症候群もパトー症候群もトリソミーが原因です。トリソミーになってしまう原因は精子または卵子を作る段階でのエラーが問題と言われています。通常、精子や卵子を作るときには二本のDNA鎖を持っている細胞が分裂して、DNA鎖を一本だけ持っている精子や卵子を二つ作ります。しかし、稀にエラーが発生してしまって一方の細胞に二本のDNA鎖が入り、もう一方の細胞にはDNA鎖がないという状況になることがあるのです。DNA鎖がない細胞は死んでしまうことになりますが、二本ある精子や卵子も生きることができるので、受精することがないわけではありません。たまたま生まれてしまったこのような精子や卵子と、正常の一本だけDNA鎖を持っている卵子や精子が出会って受精し、無事に受精卵として育っていくとトリソミーを持つ胎児が育っていくことになるのです。一般的な傾向として年齢が高くなるほどこのようなエラーが起こりやすくなってしまい、トリソミーを持つ子供が生まれやすくなることが知られています。高齢出産を避けたほうが良いと言われている理由の一つなのです。

エドワーズ症候群の典型的な症状

エドワーズ症候群に症候群という名称が付けられているのは、一つの染色体異常に起因して多様な症状が出てきてしまうからです。風邪も感冒症候群と呼ばれることがあり、一種類のウイルスや細菌への感染なのに咳やくしゃみ、鼻水や鼻づまり、悪寒や頭痛、発熱などのさまざまな症状が出るでしょう。同じようにしてエドワーズ症候群もトリソミーが18番目の染色体で起こっただけなのに多岐にわたる症状に悩まされることになるのが特徴です。また、症状にはかなりのバリエーションがあるものの、誰もが必ず全ての症状に苦しむとは限らないのも特徴として知られています。また、同じ種類に分類される症状であったとしても程度にはかなり大きな個人差があり、トリソミー18の人同士を見比べても同じ病気とは思えないことが多いのが特色です。トリソミーのような染色体異常による病気に共通している点としてもう一つ挙げられるのが胎児の頃から症状が発生してくることです。染色体に異常があると、その染色体に入っている遺伝子がきちんと機能しない場合が多く、胎児が育つ上で大きな障害になってしまうことが多いのです。トリソミー18の場合にも例外ではなく、胎児期の成長が著しく遅いことが知られています。出生する時点でも体重が低くて体も小さくなっています。その様子はきちんと観察していれば胎児期の状態でもよく分かり、妊娠週数の割にお腹が膨らんで来なくておかしいというのに気づく場合もあるほどです。実際に生まれてきたときによくある症状としては多指症になっている、手指、足指の重なりが生じている、顎が小さい、胸骨が短い、足が揺り椅子状になっているといった典型的な発育の問題が発生しているものが挙げられます。外見だけでなく心身の機能についても十分な状態ではなく、さまざまな合併症を持ってしまうことも少なくありません。先天性心疾患によって心臓の機能が十分ではなく、運動をするのは難しい場合がほとんどです。肺高血圧を伴うことも多く、難聴で耳がほとんど聞こえない場合もあります。消化器系では食道閉鎖、胃食道逆流、呼吸器系では無呼吸発作、上気道閉鎖、泌尿器系では馬蹄腎や水腎症、骨格系では関節拘縮や側弯症などの合併症が典型的です。この他にも悪性腫瘍であるWilms腫瘍や肝芽腫も起こるリスクが高く、全身にわたる症状が起こってしまうのが特徴です。

エドワーズ症候群の検査や診断と治療の現場

エドワーズ症候群にはNIPTによる検査がおこなわれるようになってきていますが、以前はコンバインド検査や血清マーカー検査が主流でした。これらはどれも胎児のうちに検査できるという点で優れていて、しかも非侵襲的な方法になっています。ただ、どれもが非確定検査であって、あくまで一定以上の確度でエドワーズ症候群かどうかの可能性を調べられる検査です。原理的にはNIPTは血液中に含まれている胎児由来のDNA断片を調べることでトリソミー18かどうかを判定しています。その確度の高さが優れていて99%となっているのが特徴です。妊娠10週から始められるという点でも魅力があることから利用者が増えてきています。一方、コンバインド検査では超音波検査と血液中のマーカーや体重などを総合的に見ることで判断するもので、確度は83%です。血清マーカーについても確度は80%という水準になっています。これらの検査で陽性になった場合には確定診断をするために絨毛検査や羊水検査を受けなければなりません。これらの検査は確度が100%ではあるものの、侵襲的な方法になるのでまずは採血程度で済ませられる他の方法が用いられています。このようにして診断されると治療できるのかというと、実は現状では有効な治療方法がありません。生じてしまった合併症への対症療法を繰り返していくことにより症状の負担を軽減していくというのが治療方針になっています。検査をしておくことによってどのような子供が生まれてくるリスクがあるかを理解でき、適切な準備を整えておけるようになるのがメリットです。

エドワーズ症候群はDNA鎖が三本あるトリソミーという状態が18番目の染色体で起こることによって引き起こされる先天性症候群で、トリソミー18と呼ばれています。発育に支障が生じてしまうことから発達障害が起こりやすく、全身的に組織や器官の機能不全に悩まされることになる場合がほとんどです。検査方法はNIPTのように確度が高い非侵襲的な方法が生まれてきましたが、確定診断をするには侵襲的な方法を用いることが必要です。エドワーズ症候群の治療方法は確立されていないので対症療法をおこなっていくのが基本になっています。